青森の玉子とうふは、まるで「茶碗蒸し」 何故こんなに具沢山?発明したメーカーに聞く
読者の皆さん、「玉子とうふ」はお好きだろうか。
やさしい味とツルンとしたのど越し。とにかくサッパリした印象の食べ物だと思っていたのだが......青森県では、違うらしい。
こちらは青森・東津軽の食品メーカー「木戸食品」が販売している「茶わんむし風玉子とうふ」。青森で「玉子とうふ」と言えば、コレのことらしい。
2023年5月22日、青森県観光企画課の公式ツイッターアカウント「まるごと青森」(@marugotoaomori)がこんなつぶやきを投稿した。
「今日は #卵料理の日 なので、青森の玉子とうふについて
全国的には、具なしや薄口のダシ醤油がついているものが多いようですが、青森の玉子とうふには鶏肉・筍・しいたけ・なると など具沢山でまるで茶碗蒸し
温めても冷やしても美味しいんですよ~」
茶碗蒸しなのか、玉子とうふなのか、なんだかわけがわからない。記者は24日、ツイートを投稿した青森県観光企画課の職員を取材した。
津軽地方では当たり前らしい
観光企画課の職員の話によると、茶碗蒸し風の玉子とうふは青森県内の全域で販売されている。とりわけ津軽地方で親しまれているという。職員自身も津軽地方・弘前市出身で「夕食など食事の時に普通に並んでいました」。
「茶碗蒸し風」ではあるが、「茶碗蒸し」との違いも明確にある。
「青森の茶碗蒸しは銀杏の代わりに栗の甘露煮が入っていて、甘い味付けになっています。茶碗蒸し風の玉子とうふは栗の甘露煮が入っていなくて、茶碗蒸しよりもダシの味を楽しむ感じです」(観光企画課の職員)
話だけ聞くと、「青森の茶碗蒸し」よりも「青森の玉子とうふ」のほうが、記者(埼玉県出身)の知っている「茶碗蒸し」に近い気さえしてきた。
そんな「茶碗蒸し風玉子とうふ」は、なぜ生まれたのか。記者は26日、茶碗蒸し風の玉子とうふを生み出した木戸食品を取材した。
同社の社長・木戸宏文さんによると、木戸食品は1907年に豆腐屋として創業した。「茶わんむし風玉子とうふ」が発売されたのは1970年のこと。
「私の父にあたる先代の木戸宏がある娘さんを嫁にもらおうと挨拶に行ったら、相手の父親から『豆腐屋に娘はやれない』と言われたそうです。その出来事がきっかけで一念発起して卵とうふの研究を始めたそうです」(木戸社長)
そのエピソードだけでなく、豆腐製造を営む同業者が増えたことも理由のひとつ。価格競争が激化する中で差別化を図るために、一般の豆腐とは異なる新商品の開発に取り組んだのだ。
茶碗蒸し風が「玉子とうふ」のスタンダードに
当初は豆乳に液卵と調味液を加えて凝固させた「ハッピーちゃん」を発売。いわゆる一般的な玉子とうふだったが、不発に終わった。そこで、宏氏の母で近所の冠婚葬祭で料理を振る舞っていたキミエさんが「茶碗蒸しを真似て作る」というアイデアを与えたという。
宏氏は母のアドバイスを元にしっかり煮込んで味付けしたシイタケ・タケノコ・なると巻き・鶏肉を入れた「茶碗蒸し風の玉子とうふ」を発明。茶碗蒸しとの決定的な違いは、「豆乳を使っていること」だという。
木戸社長によると、約40年前に青森にあった「玉子とうふ」は木戸食品の「茶碗蒸し風」だけだった。そして青森の玉子とうふは「具沢山」がスタンダードに。その後、青森だけでなく秋田、岩手、北海道でもヒットしたという。
Jタウンネット記者は東京都中央区にある「青森県特産品センター」で木戸食品の「茶わんむし風玉子とうふ」を入手。食べてみることにした。
ダシの風味と、濃厚な卵の旨み。しっかりと味付けされた沢山の具が心を満たしていく。
関東で見かける茶碗蒸しとよく似ているが、暑い時期に食べるには冷たい玉子とうふがありがたい。
念のため、近所のスーパーで具なしの玉子とうふも購入して食べ比べてみたが、具沢山の「茶わんむし風玉子とうふ」のほうがお腹も満たされるし、満足感も高かった。
一気に「茶わんむし風玉子とうふ」のファンになってしまった記者に、木戸社長はもう1つ見逃せない商品を教えてくれた。
JR新青森駅・旬味館にある木戸食品直売店で販売されている「玉子とうふキーホールダー」だ。青森に行ったら、絶対買お......。