「気付くと崖の下に居て、見知らぬ男に見下ろされていた16歳の私。『とりあえず』と足を縛られたあと...」(神奈川県・60代男性)
目を開けると上には空が
ヘルメット越しに当たったガードレールの衝撃を今も忘れることができません。
どの位時間が経過したのか分かりません。目を開けると空が見え、何人もの人がガードレール越しに私を見下ろしていました。
「事故った!」。そう認識し、何とか立ち上がろうと体を動かそうとしましたが、首と左手以外は全く動きません。私はガードレールに衝突して10メートル近く崖を落っこちたようです。
そして近くに1人の男の人が立っていました。

「動ける?とりあえず足を縛るね、血が出てるから」
その人は私の足を縛ると、私を抱き起こし、おんぶして崖の上まで上がってくれたのです。正直、体中が痛かったのですが、反応することもできませんでした。
崖の上に戻るころには友人以外は誰もいなくなっていて、友人は泣きそうになりながら「とりあえず家に連絡してくるから」と言いました。
携帯電話のない時代で、箱根の山の中なので公衆電話もありません。友人は麓まで電話をかけに行きました。そして、気が動転していたのでしょう。私の実家がある世田谷までバイクで直接報告しにも行ったそうです。