「夫と別れ、ベビーカーを押して乗った夜の電車。静まりかえった車内でギャン泣きし始めた娘に、若いカップルが...」(栃木県・30代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Kさん(栃木県・30代女性)
その夜、Kさんは1歳半の娘を連れて電車に乗ることになった。家族で食事をした帰り道だった。
幸い車内は混雑しておらず、静まりかえっている。娘もベビーカーの中でウトウトし始めた。
しかし、目的の駅まであと15分というところで、娘が泣き出してしまい......。
<Kさんの体験談>
東京に住んでいた頃、夫と1歳半の娘と電車に乗って知人のレストランへ夕食を食べに行ったときのことです。ベビーカーを電車に乗せて出かけるのには慣れていたし、夫も一緒だったので不安はありませんでした。
レストランでは知人と話がはずみ、予定より遅い20時を過ぎに店を出ることに。ただ、夫はそのまま知人と飲みに行くと言うのでそこで別れ、私と娘は2人で電車に乗ることになったのです。
静かな車内で娘はウトウト。しかし...
幸い電車はあまり混んでおらず、車内はシーンと静まり返っていました。娘もいつも通りベビーカーの上でウトウトしており、すぐにでも眠りそうでした。
しかし、目的の駅まであと15分くらいという時に急にぐずり始め、だんだん泣き声が大きくなっていきます。焦った私はおもちゃやジュースで気を紛らわそうとしますが、眠くておっぱいが欲しい娘は見向きもしません。
いつもなら準備している抱っこ紐は、「夫と2人だからどちらかがベビーカー持てばいいだろう」と持ってきていませんでした。
揺れる車内で抱っこは不安でしたが、泣き止ませたい一心で娘を抱き上げ小声で話しかけ続けました。
なかなか泣き止まない赤ん坊の声は、疲れた大人の耳には耐え難いものです。周りの方にすみません、すみませんと頭を下げたものの、いたたまれなくて心が痛みました。
近くのビジネススーツを着た男性がチッと舌打ちし、「うるせえなぁ」と呟き、いよいよ私まで涙が溢れそうになりました。駅に着くまでの時間が永遠に続くかのように感じられました。
近づいてきたヤンキー系カップル
ようやく目的の駅が近づいてきましたが、今度は娘を抱っこしたままではベビーカーを運べないことに気がつきました。畳めば、降りる際の数秒間は持てますが、娘を抱っこしたままでは畳めないし、中に入れた荷物も持てません。
娘は相変わらずギャン泣きのままです。
駅に近付くにつれて「どうしよう、どうしよう」とパニックに陥ってしまいました。
そこに、いわゆるヤンキー系というか、ちょっといかつい格好の若いカップルが近づいてきました。
「またうるさいって言われるのかな」、と身構えた私に、彼らは言いました。
「降りますか?ベビーカー持ちますよ」
とても優しいトーンでした。
全く予想していなかった展開に、私は一瞬ぽかんとしてしまいました。2人は駅に着くとすぐにベビーカーを降ろして、ホームの真ん中あたりまで運び「ここで大丈夫ですか?」と声をかけてくれました。
「きっと私たちが初めてではない」
思いがけない優しさに触れた私は胸がいっぱいになり、何度も2人にお礼を言いました。2人は会釈をして、何事もなかったように立ち去りました。
いつのまにか娘も泣き止み、スヤスヤ眠っていました。
私は見た目で判断した自分をとても恥ずかしく思いました。2人の爽やかな気遣いに心が洗われるようでした。
駅のホームに微妙に傾斜があることを知っていたのか、ベビーカーをホームの真ん中まで運んでくれた2人の細やかな気遣い......。きっと2人が助けたのは私たちが初めてではないのだと思います。
あの時ギャン泣きしていた娘も今年の春から小学生です。あの時のお2人のおかげで、私は「世の中優しい人がたくさんいる」と安心して子育てをすることができています。
本当にありがとうございました。
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