「28年前、中国から引っ越してきた私たち。日本語がわからず間違えて乗った路線バスで、運転手が...」(宮城県・60代女性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Yさん(宮城県・60代女性)
28年前、Yさんは家族3人で中国から日本へとやってきた。
日本語教室に通いながら、日本語や日本の文化を学ぶ日々を送っていたある日、友人の家へと行くためにバスに乗車した。けれど、まだ日本語がよくわからない彼らには、どこで降りればいいのか分からなくて......。
<Yさんの体験談>
私は今から28年前に中国から日本に来ました。夫と2人、共に30代。1人娘は小学校4年生でした。
来てからまもなく、日本語教室で日本語を習い始めました。
最初は家族3人でアイウエオから勉強しまして、一週間後、娘は日本語がわからないまま近くの小学校に編入。私と夫は日本語教室で他の中国人と一緒に、日本語と日本の習慣などを習いました。
バスの中の人が全員降りたのに...
ある日曜日に、私たち家族は友達の家に遊びに行くため、バスに乗りました。
日本に来てから初めての外遊です。緊張しながらバスに乗り、表示される停留所の名前をじっと見ていました。
他の人が全員降りたあと、運転手さんが不思議な顔をして、バスの中に残っている私たちのところに来ました。
「どうして? どこまで?」
といったことを尋ねに来たのだと思いますが、当時の私は運転手さんの話していることの意味が全然わかりません。返事もできません。
家族3人の中で一番日本語が上手なのは娘です。私は娘に「住所を教えて」と言いました。
娘は自分の日本語に自信がなくて、渋々な顔しましたが「早くして」と促すと、片言で行きたい住所を言いました。
バスがいっぱい集まっているところで...
運転手さんは「乗り間違えた」と言っていたかなぁ?
私たちをのせたままバスは走りだし、まもなくバスがいっぱい集まっている所に停まりました。
そこで誰かと話をした後、普通の車に乗り換えて、「どうぞ」と手ぶりをしました。
なにかいっぱい喋っていましたが、私たち3人には運転手さんの言葉がわからない。でもすごく安心して、その車にのりました。
車の中では、運転手さんは何にも喋りませんでしたが、ずっと笑顔でした。
たぶん、話をしても私たちにはわからない、とわかったから......。
結構走って、ついに友達の家に到着しました。友達が家の入り口で私たちに手を振っている姿を見ました。
ほっとしました。
運転手さんは友達と何か話しました。
私たちは降りて、運転手さんに「ありがとうございました」と何回も言いました。
その後、運転手さんは仕事が終わったから自分の車で送ってくれたのだと、友達から聞きました。
あれから28年間たちましたが、運転手さんの優しい笑顔がずっと忘れられません。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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