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ようこそ、ここは「羽犬」の街―― 福岡・筑後市に奇妙なオブジェが点在している理由

福田 週人

福田 週人

2022.12.19 17:00
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一見何の変哲もない街なのに、「奇妙な二文字」がやたら目につく――。そんな不思議な風景が、ツイッター上で注目を集めている。

羽の生えた......犬?(画像は埋火@akeyoakeさんのツイートより、以下同)
羽の生えた......犬?(画像は埋火@akeyoakeさんのツイートより、以下同)

こちらは、九州在住のツイッターユーザー・埋火(@akeyoake)さんが2022年12月11日に投稿した画像。3か所の写真が1枚にまとめられており、そのどれもに羽の生えた犬のような不思議な生物の像が映っている。

土台に「羽犬」という漢字が書かれていたり、近くに「羽犬塚駅」という地名の書かれた看板がある所を見ると、「羽犬」というのがこの生物の名前のようだが......ミステリアスな光景に、ツイッター上ではこんな声が寄せられている。

「日本のグリフォン...?」
「この映像、アニメかゲームの画像かと思いました」
「これ不穏な効果を狙ってAIで作った写真とかじゃなくてマジで存在する町ですか...?」

「羽犬」とは一体何なのか。なぜ街中のあちこちに像があるのか。その謎を解明するため、Jタウンネット記者は13日、まずは投稿者の埋火さんに話を聞いた。

街のあちこちに「羽犬」がいる

埋火さんが「羽犬」を発見したのは12月の初めごろ。場所は福岡県の筑後市だ。

「駅前や交差点、公園、学校前などに羽の生えた犬の像が当たり前のようにあって、よくよく考えてみるとかなりシュールに思えました」(埋火さん)

この他、壁に描かれたアートの中やマンホール、街角の看板にも羽犬が登場するなど、「羽犬」という存在が当然のものとして受け入れられ、日常に溶け込んでいる様子だったという。

画像は埋火(@akeyoakeさん)のツイートより
画像は埋火(@akeyoakeさん)のツイートより
「凄くユニークで素敵な街だと感じました。『羽犬』だけに限らず、自分の住んでいる町の当たり前のように思える風景が、実は一歩退いて眺めてみると、たまらなく不思議で面白いものだったりする事があるのかもしれません。今回は特にそれを強く感じた気がします」(埋火さん)

埋火さんが筑後市を訪れたのは、この地に残る「羽犬伝説」に興味を持ったからだという。

「羽犬伝説」というのは、一体どういう伝説なのか? 記者は14日、筑後市役所の企画調整課に詳しい話を聞いた。

天下人・豊臣秀吉との関係

取材に応じた同課担当者によると、「羽犬」に関する伝承は2種類ある。どちらも豊臣秀吉にまつわるものだ。

まず1つ目。1587年、薩摩(現在の鹿児島県)の島津氏を討伐するため、秀吉は九州に進軍した。

この時、秀吉は翼が生えているかのように早く走ることのできる愛犬を連れていたが、その犬は病にかかって死んでしまう。

秀吉は大変悲しみ、それを見かねた家臣たちが愛犬の塚(=墓)を作ったのがこの場所だった、というものだ。

大阪城にある豊臣秀吉像(画像はPhotoAC)
大阪城にある豊臣秀吉像(画像はPhotoAC)

2つ目の伝承では、「羽犬」は秀吉の愛犬ではなく、そのどう猛さで地域の人々を困らせていた、羽の生えた妖犬だ。

秀吉は妖犬を退治するのだが、その勇猛さを讃えて塚を作って弔ったのだという。

市内の寺に「羽犬の塚」

筑後市ではそんな「羽犬」を街のシンボルとし、まちづくりに取り入れている。その一環として、2022年現在、市内には全4体の羽犬像が設置されているのだ。

不思議な形のオブジェだ(画像は埋火@akeyoakeさんのツイートより)
不思議な形のオブジェだ(画像は埋火@akeyoakeさんのツイートより)

最初の羽犬像は、「筑後ライオンズクラブ」の結成30周年を記念して、1991年に製作・寄贈されたもので、JR羽犬塚駅前に設置された。この像は1997年に一度市役所前に移設された後、2009年には再び羽犬塚駅前に移設されたという。

2つ目の像は、市制施行40周年事業の一つである「彫刻のあるまちづくり事業」の第1号作品として、1994年に山ノ井交差点に設置された。

「その後、街に彫刻のある風景を創出することにより、筑後市のイメージアップ、個性を強くアピールすることを目的とした、『うるおいの街角整備事業』の一環として、1995年に3つ目を羽犬塚小学校校門前に設置しました。
そして1997年に作った4つ目は、一度羽犬塚前に設置された後、2006年に『市民の森公園』に移設されました」(担当者)

不思議な生き物「羽犬」が、日常に溶け込んでいる街・筑後市。

羽が生えているかのように早かった犬のものか、羽の生えた妖犬のものか――市内の宗岳寺には「羽犬の塚」が存在している。

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