躍動感がハンパねェ...! 「走り大黒」が呼びかける「奈良マラソン2022」募集パンフがカッコよすぎると話題
2022年12月に開催予定の「奈良マラソン」が、ツイッター上で注目を集めている。
開催日はまだ先なのに、いったい何故か。
それは、参加募集のパンフレットがあまりにもユニークだからである。
「一緒に走らへんか」
......こう呼びかけているのは、仏像のように見える。
しかし、腕をしっかり振り上げ、まさに走っているかのよう。こんなにマラソンにピッタリの像が、実在しているの?
「一緒に」って、言われても...
奈良マラソン2022の参加者募集パンフレットは、あるツイッターユーザーが写真をツイートしたことで話題に。9000件を超えるいいねを集めるほか、こんな声も寄せられている。
「『一緒に...』って言われても、おいていかれそう」
「師走に 仏さんたちも走るの 忙しいねぇ」
「最高! 走り大黒」
「私の推しの伽藍神ではないですかっ!」
パンフに使われた写真は、地元・奈良では「走り大黒」として知られる「伽藍神立像」(奈良国立博物館蔵)のものらしい。いかにも古都・奈良ならではの、ユニークなデザインではないか。
このパンフを制作した意図は何か? 「走り大黒」をモチーフに選んだ理由は? Jタウンネット記者は奈良マラソン実行委員会に聞いた。
取材に応じたのは、事務局長の野田康彦さん。「奈良マラソン2022」募集パンフの企画意図について、こう語った。
「『奈良マラソン』は2010年から毎年12月に開催し、1万人を超えるランナーに参加いただいています。例年、パンフレットは、奈良のシカを活用したユーモラスなデザインにし、奈良らしさを伝えてきました」
「2020年に新型コロナウイルス感染症のせいで大会が中止となり、2021年は、感染症対策を徹底して何とか大会を開催したいという思いから『再始動』というコピーを使ったシリアスなデザインのパンフレットでランナーに参加を呼びかけ、無事に開催することができました」
「今年は、まだコロナの状況は予断を許しませんが、感染症対策を徹底しながらできるだけ通常に近い大会をめざすこととしており、こんな時期だからこそ明るく楽しく勢いのあるデザインにしたいと考え、『伽藍神立像(走り大黒) 』をメインに起用いたしました」(奈良マラソン実行委員会・野田事務局長)
やはりコロナ禍での開催にあたって、「明るく楽しく勢いのあるデザイン」にしたいという思いが強かったようだ。
その中で「伽藍神立像(走り大黒)」をモチーフに選んだ理由については、次のように答えた。
「以前から『伽藍神立像(走り大黒) 』の存在を知っていたうちのスタッフが、いつかどこかで使用したいと考えていたところ、今年のわれわれの思いを表現するのにぴったりだということになり、所蔵されている奈良国立博物館に相談いたしました。
そして、奈良県を盛り上げるためなら、是非と、全面協力いただくこととなり、このパンフレットができあがりました」(奈良マラソン実行委員会・野田事務局長)
「異形の大黒天」と思われていた「伽藍神立像」
奈良国立博物館のウェブサイトや文化庁の文化遺産オンラインによると、この「伽藍神立像」はかつて「異形の大黒天」であると解釈されており、「走り大黒」として親しまれていた。
近年では寺院伽藍の守護尊である「伽藍神」の中の「監斎使者」であると考えられているが、いまだ「走り大黒」のイメージが根強いようだ。
奈良国立博物館の収蔵品データベースでは、この像について次のように解説している。
「頭巾をかぶり袍(ほう)と袴(はかま)を着て、手を大きく振って疾駆する像である」
「躍動的な姿勢や、生彩に富んだ面貌に、鎌倉時代後期の造形感覚が表れている」
そんな伽藍神立像を使ったパンフレットのデザインにあたっては、実は、かなり苦心があったようだ。角度によって見え方が大きく異なるので、疾走している感じを出すには、どの画像をどんな角度で使用するのかいいか、試行錯誤したという。
ところで募集パンフのインパクトのおかげか、「奈良マラソン2022」の参加者は既に定員に達し、もう締め切ったとのこと。さすが「走り大黒」だ。結果を出すのも、素早い。
野田事務局長は、次のようにコメントした。
「『奈良マラソン』はたんにマラソン競技としてだけではなく、たくさんの方に奈良にお越しいただき、奈良の魅力を知っていただくという目的を持って開催しています。
この『伽藍神立像』は7月5日から奈良国立博物館の『なら仏像館』で展示されていますので、マラソンに関心のある方も、ない方も、ぜひ奈良国立博物館にお越しいただき、実物をご覧ください。
そして、ここを起点に奈良県の様々なところを訪ねてほしいと思います。もちろん感染症対策をしっかりしてお願いします」