19年でルネサンスが起こってる... 田舎館村「田んぼアート」の進化が凄まじすぎる件
19年もの長い歳月、仕事でも遊びでも1つのことをやり続けていれば、技術や知識は大幅に向上する。
「継続は力なり」。そんな言葉を実感させられる写真がツイッター上で注目を集めている。
こちらは青森県観光企画課の公式ツイッターアカウント「まるごと青森」(@marugotoaomori)が2022年7月13日に投稿した、県中央部・田舎館村の「田んぼアート」の写真だ。
左右2枚の写真の田んぼアートはどちらも、複数の色の稲を使ってレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を再現しているのだが......随分とクオリティが違う。
左は表情や髪型、ポーズから「モナ・リザ」であることは分かるが、のっぺりとしていて平面的。一方、右は絵画を模写したかのように精巧で美しい。
実はこのモナ・リザたちは、作られた年が違う。左側が制作されたのは2003年、右側は2022年。19年の時を経て、田んぼアート作りの腕が明らかに向上しているのだ!
「レベル上がりすぎワロタ」
まるごと青森のアカウントが投稿した03年版と22年版のモナ・リザの差はツイッター上で注目を集め、多くのユーザーからこんな驚きの声があがっている。
「レベル上がりすぎワロタ」
「ファミコンの画像とプレステの画像位の差!」
「美術も技術のクオリティが向上してて時代と進歩を感じる」
もはや同じ場所で作られたとは思えないほど進化したモナ・リザ。この19年の間にどんな進歩があったのだろう。Jタウンネット記者が7月14日、田舎館村役場を取材した。
「モナ・リザの田んぼアートはもう一度やりたかった題材でした」
そう語るのは企画観光課の職員。同村の田んぼアートの歴史を振り返ると、モナ・リザは重要な存在だという。
村で田んぼアートを始めたのは1993年。それから2001年までは岩木山を描いたずっと同じデザインを採用していた。
転機が訪れたのは、02年。NHKBS2の番組の企画で、青森の最高峰・岩木山をモチーフとしながら月や稲の図柄を交えた新しいデザインを取り入れて田んぼアートを作ることになったのだ。
「02年の経験をきっかけに、03年は元のデザインに戻すのではなくて、新しいものにしようとの機運が高まって作られたのがモナ・リザでした。これ以降、様々なデザインの田んぼアートを作っていますが、モナ・リザがその原点です」(企画観光課の職員)
「ちゃんと見える形」にするということ
03年にモナ・リザが作られて以降、田舎館村の田んぼアートのデザインは多様化。東洲斎写楽作「二代大谷鬼次の奴江戸兵衛」のような絵や、「スターウォーズ」「ローマの休日」といった映画、ウルトラマンなどのキャラクターものまで取り入れられるようになった。
そんな中で、村の田んぼアート制作体制にも変化が生まれていく。
「現地を訪れた人に、ちゃんと見えるように作ろう」という意識が芽生えたのだ。
「以前は、図柄をどう描くかを上から目視して大体の感じで作っていました。ただ、それだと村内2か所にある展望デッキから眺めた時に、ちょっと違った感じに見えてしまうんです。
そこで、建設業の方が使う機器を使ってちゃんと測量をして、真上からではなく、展望デッキからちゃんと見える形にしようとなっていきました。よく考えれば真上から見る人なんていないですからね」(企画観光課の職員)
斜め上から見た時に美しい形を作るための測量の導入に加えて、色を表現する稲の種類も3種から7種に増加。田んぼの面積も大きくなり、制作技術も年々向上していったことで、より細やかな表現が可能となった。
今の技術で、もう一度「モナ・リザ」を
そんな中、田んぼアート政策に携わる人の間でモナ・リザへの思いが募っていく。
「03年のモナ・リザは決して失敗ではない。あの当時としては成功でした。
ただ、月日が経って、色々なことを経験していく中で、『今の技術でもう一度、モナ・リザをやりたい』という気持ちがみんなの中で高まった。それで、2022年に満を持してモナ・リザをリメイクすることになったんです」(企画観光課の職員)
リメイクされたモナ・リザは、田舎館村の人々に感動をもたらしたという。
「今回のモナ・リザを見て、みんな『歴史を感じる』と言っています。前回のモナ・リザからの時の長さを実感しました」(田舎館村役場の企画観光課職員)
田舎館村の田んぼアート技術の向上を体現し、作り手の熱い思いを背負って再び田んぼに姿を現したモナ・リザ。実は20年度に作られる予定だったが、コロナ禍で制作中止に。3年ぶりの一般公開で、満を持しての登場となった。
その姿を見られるのは、22年10月10日まで。村役場庁舎に併設された展望デッキへの入館料は中学生以上300円、小学生100円、未就学児無料。