これだからオトナは楽しい! 西麻布のベテランバーテンダーに聞く「たばこ×お酒」の合わせ方
大人に許された嗜好品「お酒」と「たばこ」。
2020年4月に改正健康増進法が施行され、飲食店は原則禁煙となってしまい、お酒とたばこの両方を楽しむ機会がめっきり減ってしまった人もいるのではないか。
貴重な時間だからこそ、よりよい時間にしたいもの。となれば、たばこと相性の良いお酒を知りたい――。
そんなわけで愛煙家のJタウンネット記者は、その道のプロに教えを乞うことにした。
2021年12月14日、記者が向かったのは東京・西麻布にあるバー「霞明亭(かみょうてい)」。
ここは、お酒と一緒にたばこも楽しめる「喫煙目的店」である。
バーテンダー歴30年の愛煙家マスターに直撃!
霞明亭は2017年1月に、西麻布の路地裏にオープンしたバー。シックな雰囲気のこの店でオーナーを務める永原健司さんは、バーテンダー歴約30年で、愛煙家。
お酒はもちろん、紙たばこや嗅ぎたばこ、葉巻などさまざまな種類を嗜む「お酒とたばこ」のスペシャリストだ。
さて、今回記者が用意したたばこは、こちらの6種類。
「メビウス・100's・ボックス」「セブンスター」「ピース」はレギュラーの紙巻きたばこ、「ナチュラルアメリカンスピリット メンソール・ウルトラライト」「メビウス・プレミアムメンソール・オプション・パープル・5」はメンソールの紙巻きたばこ、「キャメル・シガー・スリム」はリトルシガー。
それぞれにマッチしたお酒を永原オーナーに選んでもらった。
メンソールはラムベースとの相性が良い!?
最初に試したのは、「ナチュラルアメリカンスピリット メンソール・ウルトラライト」。メンソールのたばこのなかでもまろやかな味わいのこの銘柄に合うお酒について、永原オーナーはこう話す。
「この銘柄はメンソールの香りが柔らかいですね。ミントのフレーバーもあるので、同じミントと合わせてラムをベースにした『モヒート』というカクテルが合わせやすいと思いますね。同じミントフレーバーの相乗効果が期待できます」(永原オーナー=以下同)
「メビウス・プレミアムメンソール・オプション・パープル・5」は同じくメンソールではあるがアメスピよりも鋭く、フレーバーもついている。
それによって、マッチするお酒も変わってくるという。
「これはアメスピに比べるとメンソールの香りが強い。フィルターのカプセルを潰すとベリー系のフレーバーが出てきますよね。カクテルを合わせるにしても、『ソルクバーノ』というカクテル良いでしょう。
ソルクバーノは、モヒートと同じラムベースなのですが、グレープフルーツとトニックウォーターで作るカクテルです。グレープフルーツはミントとの相性が良いのですが、メビウスのベリー系のフレーバーとも馴染みが良い。一緒に飲むと、合わせやすいと思います」
と説明した。
レギュラーと合うのは......
「メビウス・100's・ボックス」はクセが無く、しっかりとした味わいのたばこだ。特徴的な香りはなく、吸いやすい。永原オーナーも「この銘柄は、比較的柔らかめで、誰からも愛される香りだと思います」と語る。
「これなら『スコッチのソーダ割り』が合うと思います。スタンダードなスコッチウイスキーだと少しスモーキーな香りもありますし、合わせやすいと思います」
ウイスキーでもバーボンの方に合うというのが、「キャメル・シガー・スリム」だ。深みのある香りが印象的で一息吐いた後にアロマの余韻が残る、今回唯一のリトルシガーだ。
「これは茶色いお酒のロックと合わせても良いでしょうね。ダークラムや、熟成期間の長いバーボンのロックが合うと思います。ダークラムだったら『アップルトン エステートの12年』、バーボンなら『エライジャ・クレイグ』あたりですね」
王道のセッターはシングルモルト!
日本たばこ協会が発表している「紙巻たばこ販売実績」によると、21年の4月~9月の期間に最も売れたたばこは「セブンスター」。バニラ風味の甘いフレーバーが美味しいたばこで、香りも強い。そんなたばこに合うのは、どんなお酒か。
「セブンスターは、今回の6種類の中では香りが強い部類ですね。甘いフレーバーもあるので、熟成年数が長いシングルモルトと一緒に楽しむのが良いと思います。例えば、『ザ・グレンタレット トリプルウッド』と『ザ・グレンリベット 18年』あたりですね」
最後は永原オーナーも愛する「ピース」で締めくくる。甘くてコクのある味と、上品で豊かな香りが特徴的な銘柄だ。
「ピースくらい強くなると、茶色いお酒全般と合うと思います。ピースは、アロマが深いですし、強めですから、ブランデーも合うと思います。例えば、『クルボアジェ ナポレオン』ですとか、りんごで作った『カルヴァドス ペイドージュ ポム・プリゾニエール』が良いかもしれません。ワイン好きの人には怒られちゃうかもしれないけど、ポートワインという食後酒と合わせても良いかもしれません」
一口に「たばこ」と言っても、様々な特徴がある。だから、「合うお酒」もさまざま。
自分が吸っているたばこには、どんなお酒が合うのか。見たこともないお酒と、実は相性抜群な可能性もある。たくさんのお酒をそろえているバーでなければ、なかなか開拓できないかもしれない。
永原マスターはそんな楽しみ方ができる自身の店「霞明亭」や、現在の喫煙環境について、こう語った。
「公共の場所でたばこが吸えないのは当然だと思います。そんな中でも、頑張って喫煙所を設置してくれる人たちがいて、喫煙者と喫煙しない人が棲み分けできる環境を作ってくれています。棲み分けができて、喫煙者と禁煙者がお互いに喧嘩しない社会ができてくれれば良いと思いますね。
霞明亭が喫煙目的店なのも、こういう環境を維持しなきゃとの思いがあります。今は飲食店やバーでも禁煙のところが増えてきています。喫煙しない人の選択肢は多いんです。そうした中で、喫煙者が誰にも責められずたばこを楽しめる喫煙目的店があっても良いんじゃないかと思います。喫煙目的店と掲げれば、たばこが苦手な人が選択肢から外してもらえるでしょう。お互いに気持ちよく暮らすためにも喫煙目的店はあっても良いと思います」
喫煙者と非喫煙者。それぞれが気持ち良く暮らせる世界を永原マスターは誰よりも望んでいるのかもしれない。