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3Dプリンターで、なんでも簡単に作れると思うなよ! フィギュア製作者が語る「現実の厳しさ」

大久保 歩

大久保 歩

2021.11.03 17:00
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「3Dプリンター」といえば、使ったことはなくとも聞いたことがある人は多いだろう。

かくいう記者も現物を見たことはないが、通常のプリンターでデータを紙に印刷するように、3Dプリンターは読み込ませたデータが立体になって出てくる......そんなふうに想像していた。

まさに「最先端の便利な機械」。ところが、ツイッターで注目されているのは、そのイメージを覆すイラストだ。

(画像はAurélienさん提供)

これは、フィギュアや3DCG、イラストを制作しているAurélienさん(@anesthesie78)が、2021年10月27日にツイッターへ投稿したもの。

「想像の3Dプリンター」からは「勝手にフィギュアが出てくる」のに対し、「現実の3Dプリンター」には、「くさいレジン」「合わないパーツ」などの困難があるという。

どうやら、記者が想像していたような、なんでも立体で出てくる便利な製品ではないらしい......。

29日、投稿者のAurélienさんに詳しい話を聞いてみることにした。

「前髪」と「後ろ髪」も分割

Aurélienさんが3Dプリンターで制作したオリジナル作品「すしアザラシ」(写真はAurélienさん提供)

Aurélienさんが3Dプリンターを使う時には、アニメキャラクターの二次創作フィギュアを制作することが多い。オリジナル作品も作っていて、3Dプリンターで制作を始めたのは約1年前。使っているのは、3万円ほどで購入した家庭用3Dプリンター「Elegoo Mars」だ。3Dにもいろいろあるが、これは光造形式という、液体のレジンを光で固めていくタイプ。

「おしりぷりぷりアニマルズ」(写真はAurélienさん提供)

Aurélienさんがみせてくれた、動物をモチーフにしたオリジナル作品はつい見入ってしまうほどのクオリティ。これらの制作にも、並々ならぬ苦労があったのだろうか......。

「現実の3Dプリンター」の難しい点を尋ねると、Aurélienさんは次のように語った。

「人型のフィギュアをつくる場合、塗装のことを考えてパーツごとに分割する必要があります。例えば、前髪のパーツが顔にかかっていたら、前髪と顔の間のおでこの部分はとても塗りにくくなりますよね?
なので、普通は『顔』『前髪』『後ろ髪』『腕』『脚』みたいな感じで、体のパーツや服ごとに分割してから3Dプリントして、出力、塗装してから再度パーツをくっつけます」
「ですが、3Dプリントするときにパーツが膨張したり、あるいは収縮したりして、うまく合わなくなることがよくあります。パーツが合わないときは、データを再度修正するか、地道にパテ、やすりなどを使って直していくしかありません」

なるほど、「プリンター」と聞くと着色されたものが出てくると思ってしまうが、実際は、出力した後に手作業で塗装する必要があるのだ。

そのため、パーツごとに出力しなくてはならず、投稿のイラストのように「合わないパーツ」現象が発生してしまう。

「おもしろおかしく描きましたが...」

「すしねこ」(写真はAurélienさん提供)

そもそも、通常のプリンターもテキストや図などのデータがないと印刷できないように、3Dプリントにも「モデルデータ」が必要。そのため、何かを作るためには自分で3Dモデリングを学習するか、ネットで販売されているデータを購入しなければならない。

想像するだけで気が遠くなってきた記者に追い打ちをかけたのが、「出力失敗(一部では『印刷の死』と表現する)」という悲劇である。

「3Dプリンターの性能にもよりますが、出力失敗はよくあります。データの一部が出力されなかったり、あるいは(私のイラストのように)出力品が途中でビルドプレート(出力品ができるプレート)から剥がれてレジンタンク(レジン※が入っている四角い容器)の中にどぼんと落ちることもあります。
私も3Dプリンターに詳しいわけではないのですが、出力に失敗する原因は様々で、3Dプリンターの設定の問題だったり、気温の問題だったり、データの問題だったりします」(Aurélienさん)
※レジン...パーツ用の、液状のプラスチック素材

ようやく出力できたパーツがレジンの沼に落ちた日には、立ち直れなくなりそうだ......。3Dプリンター、ハードすぎでは?

それでもAurélienさんが制作を続けるのはなぜだろう。

「イラストの中では『レジンがくさい』とか『パーツがあわない』とか『印刷の死』とかおもしろおかしく描きましたが、それでも3Dプリンターは夢があるし、造形が好きだし、何より楽しいからです。
以前は画面の中でしか見ることのできなかったデータが、3Dプリントされて、実際に手にとれる喜びは大きいです。3Dプリンターの技術はものすごい早さで進歩しているので、近い将来もっと楽にフィギュアができるようになると思います」(Aurélienさん)

月並みな表現になってしまうが、制作への「愛」があればこそ、困難だらけの3Dプリンターにも向き合い続けることができるのだろう。

「肉まんを食べる猫」(写真はAurélienさん提供)

自分が使うことはないと思っていたが、Aurélienさんの話を聞いてがぜん興味がわいてきた。ちょっと量販店で見てこようかな......。

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