「徹夜で運転し、ようやく着いたホテルは満室。地元のおじさんに『訪ねてごらん』と指示されたのは...」(東京都・50代男性)
遠出した先で宿が見つからないと、悲惨だ。
土地勘も、頼れる人もなく......ようやく見つけたホテルで「満室」なんて言われたら、絶望するしかない。
Jタウンネット読者のZさん(50代男性)は、27年前、北海道でそんなピンチに陥った。
東京から北海道まで。道中のフェリーや現地の宿の予約もしない、気ままな車での一人旅だった。
徹夜で運転し、ようやくたどり着いたのは、函館のビジネスホテル。しかし、宿泊できるかフロントで尋ねると満室だと告げられてしまう。
予約しておかなかった自分のせいだとはいえ、今夜の宿はどうすれば......と肩を落とすZさん。そんな彼に、フロントのおじさんがある提案をしてくれたという。
目の前でフェリーが水しぶきを上げ...
今から27年前。ロードマップすら持たずに、一人で北海道にドライブに出かけたときのことです。
青森の大間から函館までのフェリーも、宿も予約せずに出かけた、気ままな一人旅でした。
東京を出発し、夜通し東北道をひた走り、やっとの思いで大間のフェリーターミナルに着いたのは昼少し前。
しかし、車から降りて伸びをしながら海を見ると、なんと目の前でフェリーが水しぶきを上げながら港を出ていって......。
仕方なく次の便に乗るために乗船受付に行ったのですが、窓口にはすでにカーテンが閉まっていて誰も対応してくれません。
近くの土産物屋さんのおばあちゃんが言うには、次の船が来るのは4時間後。
このあたりに観光できる場所があるか聞いても、「なんもないね」とのこと。私はおばあちゃんの店でラーメンを食べたりして、時間をつぶすことにしました。
「ちょっと待ちな。どっから来なすった」
その後、やっとの思いで函館に上陸した私は、函館駅近くのビジネスホテルの前に路上駐車。
疲れた体を引きずってホテルのフロントに行き、「予約してないんですが、今晩一泊ダメでしょうか?」と尋ねました。
しかし、フロントのオッチャンは、
「あいにく今夜は満室だねー」
とツレない返事。
私は「そうですか...」と肩を落とし、ボストンバッグを持ち上げてホテルを出て行こうとしました。
ところがその時、今度はオッチャンの方から声を掛けられました。
「ちょっと待ちな。どっから来なすった」
「にぃちゃん、裏のホテルを一部屋おさえたから...」
私が「東京です」と答えると、
「はぁ、飛行機かい。空港からレンタカーかい」
と聞かれたので、「いえ、自宅からずっと車です」と伝えると、また「ちょっと待ちなさい」。そして、10分ほど経ったあと、
「にぃちゃん、裏のホテルを一部屋おさえたから行ってごらん。最初の信号を左折な。50メーターくらいでまた左折な。したら20メーターくらいのところにホテルの屋上駐車場に上がるスロープがあるから、車を停めて、フロントを訪ねてみな」
とオッチャンに言われました。なんと、彼は私の代わりに別のホテルの予約をしてくれたのです。
私は何度もオッチャンにお礼を言い、その場を後にしました。
普通であれば「満室です」の一言で終わっても仕方ない状況でしたが、あのときのホテルのフロントにいたオッチャンの優しさは、27年経った今でも色褪せることなく私の心の中で輝き続けています。
それ以来、私は北海道と北海道に住む人達が大好きになり、すでに自分の運転で26回も北海道にドライブに出かけております。
あの時の名も知らぬオッチャンに感謝です。
「忘れられない旅先でのエピソード」、教えて!
自分の所のホテルが満室でも、Zさんのために別のホテルを手配してくれたフロントのおじさん。疲れ果てていたZさんにとっては、まさに暗闇に差す光のような存在だったようだ。
皆さんも、旅先で親切な地元の人と出会った経験はあるだろうか。
Jタウンネットでは読者の皆様の「旅先でのほっこりエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、旅行に行った時期・場所、具体的なエピソード(どんなことにほっこりしたのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度~)、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別、職業を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。