「模造紙」の呼び方に地域差くっきり 富山人「ガンピ」愛媛人「鳥の子用紙」...その由来とは
四国で「模造紙」と呼ぶ人は半数以下
全国で「模造紙」と呼ぶ人の割合は、77.8%だったのに対して、中部地方では「模造紙」と呼ぶ人の割合は、51.9%に留まった。
多かったのは、「B紙」(25.7%)。「大洋紙」(13.3%)も他地方と比べると多めだ。
国会図書館が全国の図書館等と共同で構築している「レファレンス共同データベース」でこの呼び方について調べてみると、世界でも数少ない紙専門の総合博物館「紙の博物館」内の図書室が
「模造紙の地域名称であるB紙(びーし)及び大洋紙(たいようし)の言葉の由来」
という質問に回答していた。
岐阜・愛知で多数派だった「B紙」という呼び方については、2つの説があるようだ。
(1)B模造紙から由来しているのではないか。模造紙の種類にはA模造(光沢を出したもの)とB模造(光沢がけしていないもの)がある。
(2)紙のサイズB1判(728×100ミリ)に大きさが近いから。
また、新潟で多数派だった「大洋紙」については「『大きな洋紙だからと教えられた』とのインターネットの書き込みあり。(新潟弁ch)」という回答。紙の博物館が有する膨大な資料をもってしても、ごくわずかな情報しか得られなかったようだ。
富山では「ガンピ」が最優勢だった。小学館国語辞典編集部のウェブサイト「Web日本語」内の、方言学者・篠崎晃一氏のコラム「共通語な方言 あなたは方言に気付いていない!?」の第8回によると、これは良質の和紙「雁皮紙」の省略形。
「本来は和紙であるが『良質の紙』という点が模造紙のネーミングとして使われたらしい」
と記載されている。
地方別のグラフに目を戻すと、四国の特異性にも目がいく。
なんと四国で「模造紙」と呼ぶ人は48.8%と、半数にも満たないのだ。そして「鳥の子用紙」が48.8%と、「模造紙」に並ぶ結果に。残りは「その他」だった。
どうやら、四国では「鳥の子用紙」という呼び方がメジャーらしい。
先述のデータベースに掲載されていた、香川県立図書館の回答によると、「身近なモノ事始め事典」(東京堂出版)に次のような記述があるという。
「・・・香川県や愛媛県では一部の地域で、模造紙のことを『鳥の子用紙』と読んでいる。これは、模造紙が越前和紙の『鳥の子紙』似せて作られたからだ。・・・」
越前和紙「鳥の子紙」というのは、先述の「局紙」を作る際に参考にされた和紙のことだ。これの主な材料は、富山の「ガンピ」についても登場した「雁皮」である。
九州地方では、「広用紙」と回答した人が10.6%いた。「広幅用紙」も1.6%。
これについても「紙の博物館図書室」が回答しているが、「紙の大きさから来たと思われる広洋紙(熊本・佐賀)や広幅洋紙(鹿児島)という語がある」と、言及するに留まっている。
学校を卒業すると模造紙を使って発表するような機会はほとんどなくなってしまうが、地域ごとの呼び名やその由来を知っていれば、思い出話のきっかけになるかもしれない。