コツは「少し崩すこと」 人気和菓子店が語る「陳列の秘訣」に納得の声
山梨県北杜市白州町、甲斐駒ヶ岳を望む甲州街道台ヶ原宿に、「金精軒」という老舗の和菓子店がある。
「あの水信玄餅で有名な店だね」と、ご存じの方も多いだろう。
金精軒の公式アカウント(@kinseiken_jp)から、2021年6月28日、次のようなツイートが投稿され、いま話題となっている。
写真は、金精軒の売り場のようだ。「大吟醸粕てら」という美味しそうな商品が並べられている。「人間は『綺麗に整っている物を壊すことに抵抗がある生き物』なので、売り場は綺麗に陳列するよりも少し崩す方がお勧めです」というコメントが添えられ、「左より右の画像の方がよく売れます」と続いている。
なるほど、と共感する人が多いのだろうか。このツイートには1万4000件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散中だ(6月29日夕現在)。
ツイッターには、多くの反応が寄せられている。
「綺麗に整っていると、それを崩したくないので手に取りません」
「あんまり綺麗だと、これ見本かな? 手にとっていいのかな? って思いますね」
「左のように隙間なく積んであると取りづらいけど、右のように少し隙間があれば取りやすいです」
「右の陳列を見ると『おっ山が崩れてる!今日動きがあった商品なんだな!この商品を好きな誰かが確実にいるんだな〜見てみよ!』みたいな気持ちになります」
「なるほど! 教訓にしたいです」
このツイートは、なぜ投稿されたのだろうか? Jタウンネット記者は、金精軒公式アカウントの中の人(担当者)に、話を聞いた。
販売する人より、お客さんからの反応が多かった?
金精軒の創業は、1902年(明治35年)。120年近い歴史があるのだが、「老舗を気取るにはちと足りません」ということだ。
冒頭のツイートのきっかけを聞いてみると、担当者はこう答えた。
「自分は社歴約10年の中堅なのですが、店員になったばかりの人の指導を担当することがあります。
とくにマニュアルなどないのですが、自分の経験から、こう教えています。お客様に手にとっていただく商品は、きちんと並べると手にとってもらえない、少し崩すのがポイントだ、と......」
「店頭販売をしている人にしか興味を持ってもらえないだろうと思いながら、ツイートしてみたのですが、思いがけず多くの方に興味を持ってもらえたことに、びっくりしました」(金精軒公式アカウント担当者)
販売する側の人より、お客さんの側からの反応が多かったことに、驚いたという。「お客さんもやはりそう思っていたのだ」と嬉しかったと、担当者。
ところで写真の「大吟醸 粕てら」とは、どんなお菓子なのか? 気になった読者もいるだろう。
大吟醸酒を醸造した副産物の酒粕を活用して、カステラ状に焼き上げたものらしい。金精軒の自信作だというが、お客さんに実際に手にとってもらうためには、実はきめ細やかな工夫があったのだ。
金精軒といえば、「水信玄餅」とご記憶の方も多いだろう。「水信玄餅」を食べたユーザーの感動のツイートが、爆発的に拡散されたこともある。
Jタウンネット記者も数年前の夏、白州町のお店を訪ねたことがあったが、あまりの行列で、断念したことがあった。
「和菓子店は夏はお客様が比較的少ないそうですが、当店はおかげさまで夏が繁忙期です。甲府駅にも店舗ができました。夏休みにぜひお出かけください」と、担当者は語った。