近隣住民が「善意で」植えた黄色い花 美しく咲いているけれど...要注意な「外来種」だった
5月上旬から、梅雨入り前までに湿地や草原で紫色の花を咲かせる「ハナショウブ」。
非常に馴染み深い存在で、散歩をしていたら公園で咲いているのを見かけた......なんてことも今の時期にはよくあるかもしれない。
この花の仲間で、黄色い花を咲かせる「キショウブ」という種類がある。そのキショウブについてのとある投稿が、ツイッターで話題となっている。
これは、2021年5月26日、ツイッターユーザーの「水(みくまり)分」(@_39ML_)さんが投稿した画像だ。「水(みくまり)分」さんは、
「今年も近隣住民の罪が咲き始めた」
とコメントを添えている。
一見すると、鮮やかな黄色の花が美しく、初夏らしいさわやかな光景だ。罪とはいったいどういうことなのか。
Jタウンネット記者は27日、投稿者の「水(みくまり)分」さんを取材し、この写真について話を聞いた。
準絶滅危惧種「カキツバタ」駆逐する恐れも
実は、「キショウブ」は国が「生態系被害防止外来種」に指定している外来種。生態系等への被害を及ぼす可能性があるため、防除等の対策が必要なものである。
しかし、「水(みくまり)分」さんのツイートによると、写真のキショウブは十数年間に渡り、近隣住民の手によって「善意で」植えられている。
「水(みくまり)分」さんが投稿の写真を撮影したのは26日のこと。
「数年前に川沿いを歩いていた時、鮮やかな黄色の花がたくさん咲いているのに気づきました。
ハナショウブに似ていますが、色がまったく異なります。調べたところ、キショウブという名前であり、要注意外来生物に選定されていることが分かりました」
と、キショウブの存在に気が付いた経緯を話す。
キショウブは特定の橋と橋の間に密集しており、人為的に見える分布をしている。なぜこの一帯にだけ植わっているのか調べている中で、近隣住民が植えているものだと知ったという。
「水(みくまり)分」さんは、
「完全に善意で植えているようで、あまり厳しく追及はできませんが、かといって元々いない種を植えることは外来種如何に関わらず良くないのは確かですし、モヤモヤした思いで毎年の開花を見ています」
と思いを語った。現在は狭い範囲に留まっているものの、周りに広がっていく恐れもる、ともしていた。
ヨーロッパから西アジア原産のキショウブは、1897年ごろ園芸植物として日本に渡来した。その鮮やかで美しい黄色い花が好まれ、ビオトープなどに使用され、現在は北海道から九州まで広い地域で野生化している。
しかし、繁殖力が非常に強く、甚大な被害が予想されるため、「生態系被害防止外来種」の中でも対策の必要性が高い「重点対策外来種」に指定されている。
同じアヤメ科のカキツバタ(準絶滅危惧種)などと交雑してしまったり、水辺に棲息する他の在来種と競合した結果、駆逐してしまったりする恐れがあるので、そのような場所で見かけた場合は積極的な防除が呼びかけられているのだ。
ではこのキショウブを植えることは、罰則等の対象にはならないのだろうか。
Jタウンネット記者は28日、環境省自然環境局野生生物課 外来生物対策室に話を聞いた。取材に応じた担当者は
「現在、罰則の対象になるのは『特定外来生物』に指定されているものに関係する場合のみです。そのため、『重点対策外来種』の場合は、植えたとしても特に罰則等の対象にはならず、法的には問題ありません」
と回答する。同様に、防除についても環境省や地方自治体が行うことはないとのことで、法的に駆除するような強制力は一切ないそうだ。
担当者は
「『綺麗だから』ということもあるかとは思いますが、やはり生態系に影響を与える外来種ですので、なるべく防除し、広めないでいただきたい、との思いではございます。
皆さんにご協力いただければ有り難いです」
とコメント。
水質浄化等の効果もあることから、キショウブは国内でも各地で広く植えられている。だが、本来の生態系を壊してしまう危険性も有している。
その美しさや利便性だけではなく、及ぼす影響にも目を向けていきたい。