「味が濃くて、脂っこくて、くどい...」 ←この不快感を一言で表現できる便利な方言
日本各地に存在する「標準語ではうまく説明できない方言」や「意味が限定的すぎる方言」。
地元であれば一言で意味が通じるのに、いざ標準語にしようとするとどう説明していいか分からない。
何とか言い換えても、細かなニュアンスが上手に伝わらず、もどかしい思いをしている地方民も多いとか。
Jタウンネットでは、そんな方言の情報を募集している。
今回は全国から届いている投稿メールの中から、「むつごい」という方言を紹介する。
胃もたれする感じ?
香川県の40代女性から、編集部にこんなメールが届いた。
「『むつごい』という讃岐の言葉をご紹介します。
味の表現の一種で、濃い(というより強めの)味付けであるだけでなく、脂っこさやしつこさもあるという味です。例えば『ケンタッキーのポテトはマックのポテトに比べ、むつごい』とか言ってました。
まさか方言だと思っていませんでした。
なので県外の大学に出て、香川県民判別踏み絵のような使い方もしてました。会話の中にサラッと『むつごい』を入れて、相手が正しく意味を理解してそのまま会話が進めば、その人は、例え上手に標準語を習得していても、香川県民だということです」
味が濃いだけではなく脂っこさやしつこさもある味、なんとなくイメージはつくけれど一言で表そうと思ったことはない。標準語で例えるのならば「くどい」に近いのだろうか。
この言葉について調べてみると「日本方言辞典(小学館、ジャパンナレッジ版)」には「むつこい」として掲載されていた。
「味が濃厚だ。脂っこい。しつこい」
といった意味で、山形県米沢市、山口県大島、徳島県、香川県小豆島、愛媛県、高知県で使用されているとある。また、投稿があった濁った音の「むつごい」は、同様の意味で、香川県をはじめ、徳島県、山形県、新潟県佐渡で使用されているとあった。
この言葉、投稿者の女性が言うように「香川県民の判別」に使うのはちょっと力不足かもしれないが、四国民の判別としての精度はそこそこ高いかもしれない。山形県民や新潟県民の可能性もあるかもしれないけれど......。
この方言がどのように使われているのか、ツイッターで調べてみると
「むつごいもの食べて胃もたれ起こすの歳を感じるつらい」
「この唐揚げむつごい...」
「チキン南蛮ってわりとむつこいイメージあったけど軽めでビックリした」
といった地方民らしきユーザーたちのつぶやきが見られた。
ツイッターで使用されている様子を見る限りでは、あまりポジティブな意味では使われていない様子。また、
「むつこいが標準語になると油っこい・味がしつこいになるの意味的にはわかるけど体感としてのズレがあって使えない...」
「香川を出てしばらくはむつごいを標準語に変換するのが大変でした」
「愛媛の『むつこい』も訳が難しいなって思います こんなに感覚はありありと分かるのに言葉がない」
「むつごいは...確かに表現し辛い。むつごいはむつごいだからな...何だろう...?くどいが近い??」
との投稿も。
「あぶらっこい」「味がしつこい」「くどい」では表現できないニュアンスが含まれているようだ。
ちなみに「日本方言辞典(小学館、ジャパンナレッジ版)」には、「むつこ(ご)い」について
「感じが濃厚だ。また、執拗だ」
「飽きるほどだ。充分だ」
との意味も載っていた。
これは、食べ物以外にも使用される表現のようで、実際にツイッターでも
「むつごいって方言...たしかに人にも使用しますよね」
「朝からこの曲はとてもむつごいかもしれん」
といった使い方をしているユーザーもいた。
あなたの地元の「標準語で説明できない方言」教えてください
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