「蚕の卵」を郵送するときだけに必要になる、「特別な表記」があるって知ってた?
郵便物を送ったり受け取ったりするときに、封筒や梱包に押されている「請求書在中」や「割れ物注意」といったハンコ。中身が何なのかが一目で分かるように表記されているものだ。
中には普段あまり見かける機会がないようなものもある。現在、ツイッターで話題になっているのは、こんなハンコだ。
白い封筒に印字されているのは、「第四種蚕種(さんしゅ)」と書かれた赤い文字。
日本郵便が定めている郵便物の種類には、第一種(手紙など)、第二種(はがき)、第三種(雑誌などの定期刊行物)、そして第四種がある。
これもその第四種に該当するケースなのだろう。
「蚕種」というのは蚕の卵のこと。養蚕農家などがこれをふ化させて蚕を飼育し、絹の原料となる繭を生産する。
蚕の卵って、郵便で送るものなのか。そして、そのためにこんな特別なハンコが存在しているのか......。
こちらのハンコに対し、ツイッター上では、
「20年以上それ届ける仕事してるけど初見です。そんなん有るんだ...」
「卵ってそないにカジュアルに送れるんだ!知らなかったです」
「植物だと『第四種植物種子』になるけど蚕だとこうなるのか」
といった声が寄せられている。
卵から蚕を育ててみたかった
話題になっているのは、筑波大学3年生のてるてる(@teruterurururu_)さんが2021年5月11日に自身のツイッターアカウントに投稿した画像。Jタウンネット記者は13日、本人に詳しい話を聞いた。
こちらの写真は11日、大学構内にある宿舎で撮影したものだというてるてるさん。蚕を飼いたいと思って業者から蚕の卵を購入した。
「そもそも飼いたいと思った理由ですが、以前高校の授業の一環で幼虫から育成した際に蚕が好きになり、このたび改めて卵から育ててみたいと思ったためです」
とてるてるさん。「第四種蚕種」というハンコを見たのは初めてで、届いた時の感想を聞くと、
「郵便で届くというのは購入時に伝えられていたのですが、このように蚕の卵を送るための区分が存在していることに驚きました。
業者と郵便局のどちらで押されたのものかはわかりませんが、郵便局の配達員らしき方がリプで『見たことがない』とお話しされているので、郵便局の関係者の中でも全体に認知されているものではないようですね...」
と答えた。
ハンコを用意している郵便局も
Jタウンネット記者は14日、日本郵便にも取材した。取材に応じた広報室の担当者によると、そもそも第四種郵便物には、
「通信教育用郵便物」
「点字郵便物」
「特定録音物等郵便物」
「学術刊行物郵便物及び植物種子等郵便物(蚕種は植物種子等郵便物に含まれます)」
といったものが該当するという。
「第四種郵便物は低廉な料金で利用できるサービスですが、第四種郵便物として送付できるものであるか確認するため、開封(封筒の端に切れ込みを入れるなど、内容物が確認できる状態)して差し出すことが条件となっております。
そのうち蚕種を内容とするものについて、開封して差し出す場合は『蚕種』の表示は不要ですが、差出人の方が密閉しての差出しを希望される場合は、蚕種の他の物が入っていないことを確認した上、当社社員が立会いのもとに密閉していただき、郵便物の表面に『蚕種』の表示をしていただくこととしています」
とのこと。つまり、第四種郵便とは特定の品を、第一種郵便などより安く送ることができる方法。そのため、本当に中身が第四種の品かどうかを確かめられるようにしておく必要があるのだ。
そこで、「蚕種」を「封筒を密閉した状態で」――外からは何が入っているか見えない状態で送りたい場合に、「第四種蚕種」という表記が必要(厳密には「蚕種」の文字だけでも可)ということだ。
開封した状態で送る場合は、表記の必要はないという。
なお、担当者によると、「第四種蚕種」のハンコは郵便局によっては用意している場所もなくはないが、「基本的にはお客さん(送り主)自身で用意して押すもの」。
この「蚕種」の表記がいつごろから用いられているかについて、担当者は、
「弊社ではこの表記(蚕種)が設けられた時期は確認できませんでしたが、先に述べた密閉の取扱いに関しては、少なくとも昭和22(1947)年の新郵便法に規程されています」
と説明した。それなりに古くからあるもののようだ。
「たしかに馴染みのない方にとっては新鮮に感じるかもしれませんが、そこまで珍しい表記でもないんじゃないかなと思います」(担当者)
皆さんも、もし蚕の卵を購入して郵送してもらう機会があったら、封筒を確かめてみるといいかもしれない。