「実物」じゃなくてよかった... 道民が震え上がる「コロナ対策ポスター」がこちらです
新型コロナウイルス感染拡大は一向に収束しないまま、2021年4月25日、東京・京都・大阪・兵庫の4地域に、新たに緊急事態宣言が発令された。
マスクや手洗い、アルコール消毒などと共に、ソーシャルディスタンスの徹底が呼びかけられている。とはいえ、2メートルのソーシャルディスタンスといっても、いったいどのくらい離れていればいいのか? 読者はすぐに答えられるだろうか。
2021年4月25日、次のようなツイートが投稿され、話題となっている。
どうやら横長のポスターのようだ。画面いっぱいにヒグマの写真がデザインされている。右手に、「ヒグマの体長約2メートル」というキャッチコピーがある。左には、「実物大で2mを実感しよう」という文章も見える。
えせ(@ese_nd)さんが投稿したこのツイートには、4万4000件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散中だ(4月27日昼現在)。
ツイッターには、こんな声が寄せられている。
「2メートルなら まだちいさいほうだな そう感じてしまう」
「体長2メートルだけど、立つと3メートル近くになる」
「実物大でよかった、、実物じゃなくて」
いったいこれは、どんなポスターなのだろう?
Jタウンネット記者は、投稿者・えせさんと、このポスターを企画制作した「札幌駅前通まちづくり株式会社」に取材した。
「クマには100メートルくらいソーシャルディスタンスを取りたいですね」
投稿者・えせさんによると、ツイートした写真は、札幌市内の札幌駅通前地下歩行空間を通行中に発見し、撮影したという。4月25日のお昼頃だった。「広告の存在はその瞬間まで知らず、発見したのはまったくの偶然でした」と語る。
「一目でソーシャルディスタンスの距離感がつかめるわかりやすさと、ヒグマの怖さや存在感のインパクトを兼ね備えていて、北海道の地域色も出ている良い表現だと感じました」(えせさん)
えせさんは実際にヒグマに遭遇した経験もあるようで、本物のヒグマについては、「道東方面を車で走っているとまれに遭遇するのですが、かなり大きいので驚きます。クマには100メートルくらいソーシャルディスタンスを取りたいですね」とつぶやいている。
次に、Jタウンネット記者は、札幌駅通前地下歩行空間を管理し、このポスターを企画制作した「札幌駅前通まちづくり株式会社」に、電話で話を聞いた。取材に応じたのは、営業・管理グループ担当者だった。
「これは、昨年9月下旬から札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)内の5カ所に、掲出しているものです」
同担当者によると、「チ・カ・ホ」とは地下鉄さっぽろ駅と大通駅を結ぶ、天候に左右されない520メートルの地下歩行空間。札幌の中心地の11棟のビルと直結しており、北海道のシンボルである赤れんが庁舎(北海道庁旧本庁舎)や札幌時計台など、観光名所へのアクセスも良いそうだ。
「新型コロナウイルスの感染拡大の収束が見通せない状況の中、チ・カ・ホ内で行われるイベントでも、『新北海道スタイル(感染防止対策)』を実践しながら継続していましたが、この取り組み(新北海道スタイル)を継続して行っていく必要があり、また広く周知する必要性を感じたことから、弊社の企画として実施しました」(営業・管理グループ担当者)
新北海道スタイルとは、国が示した「新しい生活様式」の道内での実践に向けた、道が提唱する新しいライフスタイルやビジネススタイルのことだ。「正しい手洗い」や「咳エチケット」、「部屋の喚起」など、感染しない・させないための取り組みを求めている。
「とはいえ、自粛や注意喚起ばかりではストレスも溜まってしまうと思い、2メートルのソーシャルディスタンスを実物大で楽しく意識できるようにと願って、5種類のバナーを制作し、ヒグマはその中の一つです」(営業・管理グループ担当者)
ヒグマの他に、時計台の文字盤、JR札幌駅の看板(札の文字)、マンホール、横断歩道の白線といったバージョンがあるそう。
ところで、ポスターで使用したヒグマは、撮影したのですか? と聞いてみた。
「いえ、フォトライブラリーで借りたものです。札幌市内でヒグマに遭遇することなんて、まずありませんからね」と、担当者は苦笑交じりに答えた。
それは良かった。コロナはもちろんだが、ヒグマにはもっと遭いたくない。ヒグマにも新型コロナウイルスにも、永遠にソーシャルディスタンスを保っていきたいものだ。