女湯で酒が飲める、だと...? 色んな背徳感を楽しめる「不健康ランド」に行ってみた
突然だが、皆さんは銭湯、お好きだろうか。
家とは違う広いお風呂もさることながら、昔ながらのどこか懐かしい雰囲気が好きという人もいるだろう。
そんな銭湯好きにはたまらない酒場が、東京都文京区の根津にオープンしたらしい。
お店の名前は「不健康ランド 背徳の美味」。店の公式ツイッターによれば、
「築70年の元銭湯の女湯で酒を飲むという背徳感」
を味わうことができるという。
この元銭湯とは、1952年の開業以来地元で長く愛されていたが、設備の老朽化などで2008年に惜しまれつつも廃業した「宮の湯」。20年6月にアートを軸とした複合施設としてリニューアルし、今回はその女湯が酒場になった。
浴室でお酒を飲めるのはもちろん、男性なら決して入れない女湯で......というのも確かに背徳感があるかもしれない。何より、銭湯というレトロな雰囲気の中でお酒を飲むのはとても楽しそうだ。
オープン日は2020年12月18日。
それに先駆け、Jタウンネット記者は10日、プレオープン中だった「不健康ランド 背徳の美味」を訪れた。
東京メトロ千代田線を降りて、1番出口から歩くこと1分。
ひっそりとした路地に入った先で、筆者を出迎えたのは鮮やかなネオン看板だった。
看板には、豚のキャラクターが寝転がっている何ともゆるっとしたイラストと店名、そして
「心の洗濯 入れる一服」
というコンセプトが書かれている。
入口ののれんをくぐって早速、中に入ってみた。
中は銭湯そのもの
入ってすぐのスペースは、もともと脱衣所だった場所のようだ。
タイル張りの壁に温度計や風呂桶など見慣れた銭湯の風景に、椅子と机が並べられている。
靴を履いたまま、脱衣所をうろうろするという非日常な体験にすでにテンションが上がってきた筆者。
更なるワクワクを求め、すのこを跨いで浴室に向かう。服を着たまま風呂場に入るのはちょっと悪いことをしているみたいでドキドキする。
これが背徳の美味か......何だか分かってきたぞ......。
元浴場には、真ん中と左右にカウンター席が設けられていた。
その足元には、なんと蛇口が。洗い場そのままである。
他にも、机の上に固定シャワーの蛇口がついている座席があったり、足元には排水溝があったりと、銭湯らしさがあちらこちらに見られるのがとても楽しい。
メニューも背徳的...!
筆者が案内されたのは、立派な銭湯のタイルに面したカウンター席。
こうして改めて見るとなんとも迫力があるな......と綺麗なタイルを眺めていたら、お店の人がお酒とおつまみを持ってきてくれた。
この日はプレオープンとのことで、店オススメのメニューを出してもらった。
まずはお酒。
銭湯いえばお決まりの牛乳をお酒として楽しめる牛乳ハイ。
今回、筆者が飲んだのはコーヒー牛乳ハイといちご牛乳ハイだ。
自分で焼酎の入ったコップに瓶の牛乳を注いで完成。
まずはいちご牛乳ハイを飲んでみた。
子どもも大人も大好きないちご牛乳の味で、甘くて飲みやすい。つい、風呂上りのような気持になって一息に飲んでしまいそうになるほどだ。とはいえ、奥の方でほんのりアルコールの香りもして、しっかりお酒である。
続いてコーヒー牛乳ハイ。こちらも昔ながらのコーヒー牛乳をイメージしながら一口飲んで、驚く。甘くない......!
メニューを見ると「ちょっと大人の甘くないコーヒー牛乳」と書かれていた。
確かにこれは大人の味だ。先ほどのいちご牛乳よりアルコールの風味も感じる気がする。
甘いのが苦手だけど銭湯気分を味わいたい......そんな人にぴったりかもしれない。
他にも、牛乳ハイはスタンダードな牛乳やフルーツ牛乳もあり、全4種類。いずれも480円と値段も手頃である。
そしておつまみとして出してもらったのは、こちら。
おすすめしてもらった3品の中で、妙に気になるのが「魔法のキノコ」。こんもりと盛られているのはえのきだけの素揚げである。
サクサクとスナック感覚で軽く食べられる素晴らしいおつまみだが、いったいどこが魔法なのか......? その理由はどうやら、その横にちょこんと置かれている「パケ」にあるようだ。
気になったのでお店の人に聞いてみると、この謎の粉は香辛料ミックスのようなものだそう。とはいえ、意味ありげ(?)な袋に入った粉を振りかけていると、何だかいけない気持ちがしてくる。これも背徳の美味......。
慎重に粉を振りかけたえのきだが、食べてみると、何やら複雑な味がしてよりいっそう後をひくおつまみに変身していた。お酒も進む。何の味だろう、少しぴりっと辛くて無限に食べられてしまう味だった。
こんなに揚げ物をもりもり食べてしまってもいいのだろうか......と思いながらも、全て完食し心もお腹も、背徳感も満たされた筆者。
ここで改めて「不健康ランド 背徳の美味」を運営するwackwack creative代表の井川裕介さん(37)にこのお店について詳しい話を聞いた。
「役目を終えたものに再び価値を」
どうして築70年の銭湯をこのような「酒場」にしようと考えたのか。
「社名に入っている『wack』とはヒップホップのスラングでダサイとか、クソとかいう意味なんですね。うちの会社では、それをワクワクしたものに変えていきたいという思いがあります。
たとえば、うちでは他にも、40年続いていた純喫茶を新しく喫茶酒場に変えた『不純喫茶ドープ』というお店もあるんですけど。ドープや、この不健康ランドのように一度価値を失ったものや、役目を終えたものに再び価値を与えたい、色をつけたい、そんなふうに考えています」(井川代表)
また、銭湯という空間について「とても面白い場所」という井川代表。それを踏まえ、
「経年劣化によって生まれた独特のカッコよさがあると思うんですよね。この中のタイルなんかも、今から作ろうと思っても作れない。リアルなカッコよさがあると思います。
そんな銭湯でお酒が飲めたら背徳感があって面白いなって思って、この店が出来ました」
と、この店が誕生した理由を説明した。
井川代表は、バーベキュー事業を展開するREALBBQの代表も務めており、元々はそちらが主軸だったという。
しかし、新型コロナウイルスの影響でバーベキュー事業が大きな打撃を受け、飲食店事業に本格的に力を入れはじめた。今年に入って、この「不健康ランド」が3店舗目のオープンとなる。
コロナ禍の飲食店経営は厳しいものがあるのではないか、そう井川代表に尋ねると
「バーベキューは宴会需要であることで今回かなり大きな打撃を受けました。
それに加え、季節性や天候リスクが高く稼働が限られるため、しばらくは見通しが立たない状態です。
それに比べると飲食店は、通年で稼働できますし、天候リスクも小さいんですよね。
確かにコロナは大変ですけど、バーベキューと比べると飲食店事業には強い可能性を感じますね」
と力強い回答があった。
まだまだ面白いネタがたくさんある、という井川代表。今後も更なる店舗展開を視野に入れているそうだ。
「言いたくなるコンテンツを作るということは常に大事にしています。だからこの店についても『不健康になりにいこうぜ』みたいな、そんなふうに楽しんでもらえれば嬉しいですね」(井川代表)
ぜひ皆さんも、不健康になりに根津へ行ってみてはいかがだろうか。