「広島県民専用」の健康アプリがあった 普通と何が違う?導入するメリットは?担当者に聞いてみた
「人生100年時代」。長い人生を健康で幸せに生き続けたいとの願いから、健康への関心が高まっている。運動や食事管理の徹底、さまざまな取り組みを行っている人もいるだろう。
しかし、運動や食事に気を遣っているつもりでも、自分の体が今どんな状態になっているのか、成果が出ているのか、把握できていない人もいるのではないか。例えば、1か月ぶりに体重計に乗って、「めっちゃくちゃ増えてる!」と腰を抜かした筆者のように。
そんな人に紹介したいアプリがある。
広島県がデジタル技術の活用効果を試す実証の場として構築した「ひろしまサンドボックス」のプロジェクトの一つ※として開発中の「みらい健幸アプリ」だ。
※プロジェクトは広島大学を代表とし、OKEIOS、NTTドコモ、DPPヘルスパートナーズが参加。みらい健幸アプリのインストールはこちらのページから。
日々の健康状態を記録し、自分の体の状態を知って、目標を立てる際の参考にできるのだが...そんなアプリは世の中、ごまんとあると感じる人もいるだろう。しかし、「みらい健幸アプリ」には、今までの健康記録アプリとは違うポイントがあるという。
その違いとは――このアプリが広島県民をターゲットに開発され、AIによる生活習慣病のリスクに関する新たな情報を得ることができる※というものだ。
※協力市町は東広島市、安芸太田町、北広島町(2020年9月時点)
しかし、広島県民を対象にした健康アプリとは、一体どういうことなのか。Jタウンネットは、アプリの開発プロジェクトを主導する広島大学の担当者に詳しい話を聞いた。
普通のアプリと何が違うの?
まず、みらい健幸アプリの概要を説明したい。
アプリでは、スマホのセンサーから取得される実測値を使用し、歩数や上がった階段の数などが記録されていく。自身で設定した目標値を達成すると、ポイントが貯まる仕組みになっている。
また、アプリの利用者はスマホを持って指定されたコースを歩く「モバイルスタンプラリー」に参加が可能。チェックポイントを歩いてスタンプを集めて、ポイントを貯められる。
このポイントを使って、将来的には、提携先の地元企業などでクーポンの提供を受けたり、賞品が当たる抽選に応募したりできる。つまり、自分が設定した目標を達成し、健康への努力を積み重ねると、日々の生活でお得に買い物ができ、運が良ければ素敵な賞品がもらえる。
今まで、散歩はおろか、体重計に乗ることすら三日坊主になりがちだった人でも、ポイントが貯まることで、自然と歩数増加、階段の利用などが増えるかもしれない。
筆者が実際に使ってみると、自分が頑張った分、ポイントがどんどん増えていくことが実感でき、わずか数週間の利用で1000ポイント以上を獲得できた。将来的なクーポンなどの実装を前に、今からポイントを貯めておくのもよさそうだ。
もちろん、ポイント利用以外にも大きな魅力がある。
このアプリに記録されたデータは健診記録、病歴といった医療情報と連携でき、健康管理が簡単にできるようになる。将来的には、データを地域の保健師などと共有できるようにすることで、専門的なアドバイスや指導を受けられるようになるという。
また、アプリ利用者が承諾すれば、自分のデータを大学などの医療機関、製薬メーカーといった企業に提供ができる。自分がデータを送ることで、研究や分析に役立ち、社会貢献につながる自治体にもデータを提供し、保健指導の参考データとして活用することも可能だ。
現在でも自治体の保険者による生活習慣病予防の保健指導は実施されているものの、定期的な電話や訪問による指導にとどまっている。
アプリの利用でリアルタイムに健康状態の実態を把握し、AIのリスク分析データと併せて、利用者に分かりやすく、指導者の負担も少ない新しい保健指導が実現するようになるという。
つまり、このアプリを広島県民が使い、データを共有していくことで、自らの健康を守ることはもちろん、地域全体の医療システムをより充実させていくことにも繋がるというわけだ。
アプリの未来は?担当者に聞いた
まだ実証実験とのことで、アプリの本領発揮とは至っていないようだ。そこで、国立大学法人広島大学学術・社会連携室 学術・社会連携部 企画グループの市川哲也氏に話を聞いた。これからアプリはどうなっていくのか、どんな未来があるのだろうか。
まず現状のアプリの開発の進捗状況、今後について聞くと、
「すでにアプリの基本的な機能は完成しています。現在は、より多くの方々にアプリを利用してもらえるよう機能拡張をしているところです。
なお、現在のアプリでは、一部メーカーのエアコンで室温等を設定できます。今後は、年齢や健康情報と組み合わせて、AIが適切な室温管理を手助けるということも出来ると思います」
との回答があった。
実際に使っていると、記録したデータをグラフ化してほしい、アドバイスがほしいといった要望もでてくる。今後こうした機能の追加予定はあるのか。
「体重だけでなく、時系列に記録するデータをグラフなどで見られる機能を開発中です。グラフ表示する際には、可能であれば計算式なども利用して、アプリ利用者の方々により分かりやすく、親しみをもってもらえる機能を付加していければと考えています。
また、データに基づいたアドバイスについても実装する予定があります。記録した結果をもとにアドバイスする機能の1つとして、現在は、アプリ利用者の手動によるデータ入力をもとにしたAIによる生活習慣病の重症化リスク予測を提供しています。
今後は、生活習慣病の重症化リスク予測だけでなく、アプリ内での様々なサービスや本人の意思に基づいたデータ提供先の機関、企業が別途独自のサービスを提供されていくと思いますので、それらサービスにもご期待ください」
市川氏は、アプリのターゲットについて、
「健康に自信のある人から、不安な人まで、全ての広島県民にご利用いただけます。日常生活の身体活動量を健康の維持や増進に効率的に利用できるからです。
実証期間中は、協力市町にお住まいのアプリ利用者は、活動量などのパーソナルデータを市町に提供すれば、今までの検査情報に加えてAIによる生活習慣病のリスクに関する新たな情報を得ることができます。利用者にとっては市町の個別保健指導の質向上と効率化につながるメリットがあります。
協力自治体は住民のために、企業は従業員のために、このアプリを活用して健康増進に役立てる取り組みも検討されています」
との期待を語った。
みらい健幸アプリのインストールはこちらのページから。
<企画編集:Jタウンネット>