上前津駅の「ガムテープ案内表示」がかっこいい 制作者は1人の駅員...誕生の経緯を駅長に聞いた
改札や出口、エレベーターの場所を示してくれる駅の「案内表示」。目的地に行くためには必要不可欠な存在だが、乗降客の多い駅や複数路線が乗り入れる駅では見逃すことも少なくない。途中で見失い、迷子になってしまうこともあるだろう。
しかし名古屋市営地下鉄・上前津(かみまえづ)駅の案内表示は一味違う――。2020年春から幾度となくツイッターに写真が投稿されるようになり、相当目立っている様子。いったいどんな案内表示なのだろうか。
その写真がこちらだ。
「これが目に入らぬか」と言わんばかりの大きな案内表示。よく見ると文字や絵は「ガムテープ」で表現されており、並々ならぬこだわりを感じる。フォントやイラストもどことなく洒落ており、まるでアート作品のような仕上がりだ。
上前津駅は名城線と鶴舞線が乗り入れ、ショッピングや観光に便利な「栄」「大須観音」「金山」に近い。これだけ目立つ案内表示なら、県外から観光に訪れた人にも分かりやすいだろう。
これらの案内表示は、上前津駅の出口やホーム、エレベーターの場所を示し、構内の各所で掲示されている様子。ツイッターでは、
「フォントが修悦体みたいでちょっと違ういい味」
「とても目立つので 分かりやすくていい」
といった声が寄せられている。
「修悦体」とは、佐藤修悦さんという警備員がガムテープとカッターを用いて作り出す書体のこと。2000年代に佐藤さんがJRの駅内に作った案内表示がネット上で話題となり、彼の名前をとって「修悦体」と呼ばれるようになった。
上前津駅の案内表示はまさにそのような書体で書かれており、ツイッターでは「修悦体っぽい」「修悦体発見!」といった声が複数あがっている。
駅員が1人で制作
上前津駅はなぜこのような取り組みを始めたのだろうか。Jタウンネットは8月19日、名古屋市交通局(名古屋市)上前津管区駅長の岡崎幸治さん(※崎はたつざき)に詳しい話を聞いた。
岡崎さんによれば、ガムテープの案内表示は2020年4月頃から開始。上前津駅独自の取り組みで、所属の駅員が1人で制作しているという。
案内表示は、廃材や壁に直接貼るなどして作成。岡崎さんは、駅員がこのような案内表示を制作した理由について、
「一目で分かりやすい掲示が作成したかったため。また低予算で作成できるため」
と説明する。制作の際には、佐藤修悦さんの書籍「ガムテープで文字を書こう」(世界文化社)を参考にしたそうだ。
上前津駅の名物となりつつある案内表示だが、駅の利用客に変化はあるのだろうか。岡崎さんに聞いてみたが、
「コロナの影響で利用者数が減少しているため、掲示の効果はわかりません」
とのこと。利用客からの反応は「特にない」という。
岡崎さんは案内表示がツイッターで話題になっていることについて、
「話題性は求めていませんが、出入口や乗り換えで迷うお客さまが少しでも減ると良いと思います」
とコメントしている。