アザラシのお腹に鳥たちがぎっちり... 発酵食品「キビヤック」再現したぬいぐるみが衝撃のビジュアルだった
突然だが、こちらの画像をご覧いただきたい。
つぶらな瞳が可愛らしい小さな鳥のぬいぐるみたちが、灰色で丸い袋状の何かにぎっしり詰め込まれている。
みっちりとした感じが愛らしく、まるで水族館のお土産コーナーなどで販売されていそうだ。しかしこれは実は、ある博物館の展示品。
その博物館とは、「香り」をテーマにした展示を行う「磐田市香りの博物館」(静岡県磐田市)。
このぬいぐるみは、非常に強いにおいを持つといわれる発酵食品
「キビヤック」
の姿を再現したものだという。
キビヤックの衝撃的な作り方
キビヤックのぬいぐるみは2020年8月9日、染(@bsop88)さんがツイッターに投稿し、注目を集めた。
キビヤックとは、グリーンランドのカラーリットやカナダのイヌイット、米アラスカ州のエスキモーなどが作る伝統的な発酵食品。染さんは、博物館に掲示されている「キビヤックの作り方」「キビヤックの食べ方」のパネルも撮影していた。
そこで説明されていた作り方は、
「捕獲したアパリアス(編注・海鳥の一種)を直射日光の当たらない涼しい場所に一日ほど放置して冷やし、内臓と肉を取り除いたアザラシのお腹に羽が付いたまま詰め込みます。お腹をぬい合わせたら地面に掘った穴に埋めて空気を抜き、キツネなどに食べられないように上に石を積んで覆って、数か月から数年間放置・熟成させれば完成」
というもの。アザラシのお腹を開き、鳥を詰め込み、縫い合わせて埋める。
食べるときは「アザラシのお腹から取り出したアパリアスの羽を引き抜き、肛門に口をつけて発酵して液状になった内臓を吸い出しながら食べます」とのこと。とても独特で、少々グロテスクである。
このぬいぐるみは、そのキビヤック作り方を説明しているというわけだ。鳥が詰められている謎のグレーの物体は、アザラシだった。
ツイッターではこのぬいぐるみに対し、
「見た目はグロテスクだけど、これも厳しい環境で生き抜くための人の知恵の結晶みたいなもんなのね...」
「あまりのインパクトに一瞬夢でも見てるのかと思ったけど現実だった...」
「『もやしもん』という漫画の1話で登場してたので、製法や食べ方は知ってましたが...。ぬいぐるみでデフォルメしても中々にグロいですね...」
「キビヤックの説明でこんなに分かりやすい模型があっただろうか。いやない!! グロさを感じさせず、可愛さを感じさせるとはこの博物館やるな!!」
といったコメントが寄せられている。
なぜぬいぐるみに...?
Jタウンネットが11日、投稿者の染さんに話を聞いたところ、同館を訪れたのは9日のこと。
キビヤックのぬいぐるみを見たときは、非常に驚いたそう。
「え、これ、料理なの...!?と。展示室の順路的に、カレー、スイーツ、パンを経ての発酵食品コーナーでしたからよりインパクトがありました。と同時にとても分かり易く展示されているなとも。それにかわいい」(染さん)
磐田市香りの博物館では、なぜキビヤックをぬいぐるみにして展示しているのだろう。
Jタウンネットは13日、同館を取材した。
このぬいぐるみが展示されているのは7月23日から9月22日まで開催中の企画展「香りの力展」の食の力コーナー。
この企画展の担当者によれば
「新型コロナウイルスで大変な時期ですが、香りで少しでも元気になれれば...として行っている企画展です。食の力コーナーには過去に実施した食にまつわる展示のものを置いています。このキビヤックもその一つです」
とのこと。現在、このコーナーにはキビヤックとエイの発酵食品「ホンオフェ」のぬいぐるみが展示されているという。
キビヤックのぬいぐるみは、2011年夏に行っていた「発酵と香り展」の際に、博物館が製作したものだそう。なぜ、ぬいぐるみにしたのだろうか。
担当者は、
「恐らく、分かりやすさのためではないかと思います。画像で展示するとグロテスクなところもあるので、ぬいぐるみにしたのではないかな、と...。
また、発酵と香り展が開催されていたのは夏休みで、その期間は例年お子さんのご来館も多いので、そういった点からもぬいぐるみにしたのではないかと思われます」
と話した。
キビヤックのぬいぐるみは常設で展示されているものではなく、また販売もしていないとのことだ。