「無遠慮にせきする人から遠ざかれ」 100年前も今も同じ?スペイン風邪とコロナの予防策を並べた展示に反響
今から100年ほど前、世界各国で流行した「スペイン風邪」(A型インフルエンザ)。日本では約2300万人が感染し、38万人の死者が出たとされる。最近では新型コロナウイルスの感染拡大と比較されることもある。
明治初期に創立した小学校で、疑洋風建築の校舎が国宝に指定された旧開智学校(長野県松本市)では、スペイン風邪流行当時の「感染予防の心得」を見学ルートに展示している。
そこに書かれた内容が、新型コロナウイルスの感染予防策にそのまま使えそうだと、ツイッターで話題になっている。
国や松本市による約100年前の呼びかけを抜粋した「スペインかぜ(インフルエンザ)感染予防の心得」。内容は以下の通りだ。
一 たくさんの人の集まっているところに立ち入るな
一 人と対談する時は用心して3、4尺(約1m)離れる
一 人の集まっている場所では、必ずマスクをしなさい
※ハンカチなどもあてずに無遠慮にせきする人から遠ざかれ
一 度々うがいをせよ
一 用心に亡びなし、健康者も用心が肝心
一 地震の震り返しよりこの病気の再病は怖ろしい
密集を避ける、ソーシャルディスタンスの保持、マスクの着用、うがいの徹底......。コロナの感染対策とほとんど一緒だ。スペイン風邪の流行は1918年頃だが、100年経っても予防の基本は変わらないということだろうか。
この展示は、ツイッターユーザーのヒロユキ(@hirob0911)さんが2020年7月25日に紹介。29日12時時点で1万件以上のいいねが付いている。展示の内容を見たユーザーからは、
「これはささりますね......」
「どちらも『飛沫感染』と『接触感染』が原因なのは同じなので、予防法も同じということですね」
「『地震の震り返しより病気の再発が恐ろしい』ってのが災害の多い日本らしい言葉ですね・・・」
「今の3密やステイホーム、ゴートゥ~も100年後に見直されるときがくるのか...」
といった声が寄せられている。
現在の感染対策と比較できる
Jタウンネットは7月28日、旧開智学校の学芸員・遠藤正教さんに詳しい話を聞いた。
遠藤さんによれば、こちらの展示は18日に開始した。もともとは東京五輪の開催に合わせた企画展を開催する予定だったが、五輪延期により規模を縮小。スペイン風邪の感染対策などを加えた「開智学校の体育と保健」と題した企画を開催している。
「(新型コロナウイルス感染拡大の影響で)スペイン風邪が話題になり、4~5月に『スペイン風邪が流行った時に、学校でも感染症対策があったのか』といった問い合わせがありました」
旧開智学校は3月4日~5月31日にかけて段階的に休館しており、6月1日に再開。その間にあった問い合わせが、今回の企画展のきっかけになったという。
遠藤さんによれば、スペイン風邪の流行時、国からは感染予防の心得が出された。感染拡大が広がるとともに松本市からも心得が各学校に通知され、子供たちに配られたのではないかという。
今回の展示は、1919年10月に内務省衛生局が作成した「流行性感冒(スペイン風邪)予防心得」と、翌20年に松本市役所から旧開智学校に送られた「学校に於ける流行性感冒予防方法」から一部を抜粋したもの。
その隣には新型コロナウイルス関連のポスターなどが掲示され、感染対策の今昔を比較することができる。
これらの資料のほかにも、1918年には松本市役所が「流行性感冒予防に関する注意」を作成。そこでは患者の隔離、患者使用物の消毒、健康者であっても室内換気をするなど、今の感染対策に通じるところがある。
違う点があるとすれば、「手洗い」には触れられていないことだろうか。
実際に展示を見た人からは「今と同じだね」という感想が多いとのこと。遠藤さんは当時の感染対策が話題になっていることについて、
「SNSで話題になることはびっくりです。100年前の日本でも同じような状況にあったこと、同じような感染対策をしていたことなど、昔と今を見比べてもらうという内容だったので、それを感じていただけるのは嬉しいです」
としている。