四国人しか知らない? 懐かしいけど新しい「金ちゃん徳島らーめん」の不思議な魅力
マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界
第三十二回 徳島製粉「金ちゃん徳島らーめんカップ」 文・写真:オサーン
カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」をレビューする連載の第三十二回目です。今回は、徳島製粉から発売されている、「金ちゃん徳島らーめんカップ」を紹介していきます。
徳島のご当地ラーメンを再現
徳島製粉は、徳島市に本社を置く、製粉・インスタント麺メーカーです。大手とは言えませんが、四国や静岡県、そして沖縄県など局地的に販路を持ち、「金ちゃんヌードル」や「金ちゃんラーメン」、そして「金ちゃん焼そば」など、知る人ぞ知る商品を製造販売しています。
今回紹介する「金ちゃん徳島らーめん」は、徳島製粉のお膝元、徳島のご当地ラーメンを再現しています。
徳島製粉のサイトによると1999年に発売された商品で、カップ麺と袋麺がありますが、カップ麺が先に発売されているようです。徳島で人気のカップ麺で、徳島ラーメンのカップ麺と言えばこれ!という存在。
徳島ラーメンにはいくつか種類があり、今回の商品は中でも「茶系」と呼ばれるラーメンが再現されています。豚骨ベースの濃い醤油味のスープが特徴で、甘辛く味付けた豚肉や、もやし、生玉子をのせるのが一般的です。
以前短い期間でしたが、徳島ラーメン名店「いのたに」が新横浜ラーメン博物館に出店していたことがあり、当時食べたことがあります。猛烈に濃いスープが印象的で、ラーメン食べるのにこの時ほどごはんが欲しくなったことはありません。実際に喉からなにか出ていたと思います。
「徳島らーめん」の内容物を確認
カップには、液体スープ、粉末スープ、かやくの3つの別添袋が入っています。麺は白くて縮れのついた細めの油揚げ麺です。
先入れの粉末スープとかやくを麺の上に開けると、粉末に入っている胡椒と肉に付けられた甘ったるい香りが漂い、ちょっとジャンキーな雰囲気。かやくは豚肉とねぎ、メンマで、まずまずの量が入っています。
「厚み」のあるスープ
スープは、茶系徳島ラーメンの特徴を踏まえた豚骨醤油味です。
塩気が強めですが、それ以上に醤油の香りが強く感じられ、徳島ラーメンらしい濃厚感がありました。定価税別180円の比較的安価な商品ながら、徳島ラーメンの再現性はそれなりに高いものになっています。
安価なカップ麺の場合、スープの素は液体のみ、もしくは粉末のみということが多いですが、今回は液体と粉末の両方入っています。
液体スープ由来の油脂から動物系の旨みが、粉末から昆布や魚介系の旨みが感じられ、価格の割に厚みのあるスープに仕上がっていました。
胡椒を効かせた昔ながらのインスタントの味
徳島ラーメンとしての再現性が高い一方で、胡椒を強めに効かせていて、昔ながらのインスタントの味を思わせる味わいも共存していました。最近はあまりなくなってきましたが、ラーメン店の卓上の胡椒をもりもり振りかける感じでしょうか。
単に徳島ラーメンを再現した本格的な味わいというだけでなく、インスタントのなつかしさを持ち合わせていることが、人気の秘訣なのかもしれませんね。
麺は昔ながらのインスタントらしい形状
麺は白っぽい色味で、細めで縮れの強い油揚げ麺です。昔ながらのインスタント感の強い麺で、スープの胡椒と同様、最近の「正麺」とか「ラ王」ではない、古き良きインスタント麺の風情が醸し出ていました。
実際の徳島ラーメンの麺は、細めでストレート、やわらかめのものが多いとのこと。今回の麺も細めなので、決して近くないわけではありませんが、徳島ラーメンにはない強い縮れがあり、インスタント色の強い麺と言えるでしょう。
甘い味付けの豚肉やねぎ、メンマが入っている
具として入っているのは、豚肉、ねぎ、メンマです。いずれも細切れですが、量は安価な商品の割にはきちんと入っています。特に目立っているのは豚肉で、濃いスープの中に入っても甘濃い味付けが映えていました。
徳島ラーメンの具は、今回と同じように豚肉、ねぎ、メンマなど、シンプルな組み合わせの場合が多いようで、今回の具の組み合わせはそれほど遠くありません。
本格感とインスタントらしさのハイブリッド
濃い醤油を前面に出した豚骨醤油スープは、徳島ラーメンの特徴をしっかり捉えながらも、胡椒を強めに効かせることや縮れの強い麺を使うことによって、昔ながらのインスタント麺の雰囲気もありました。
本格感と古き良きインスタントらしさのハイブリッドが金ちゃん徳島らーめんの大きな魅力であり、徳島で愛される理由なのではないかと思います。
基本的には四国などの地域以外では手に入り難いですが、通販の他にご当地フェアなどで並ぶこともあるので、ぜひ食べてみてもらいたい一杯です。