魔女の宅急便「ペガサスの絵」が青森に なぜモデルに選ばれた?美術館に聞いた
公開から30年経っても色あせない、宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」(1989年)。魔女見習いの主人公・キキが修行のために親元を離れ、新しく住み始めた街で様々な経験を積み成長していく物語だ。
作中に絵描きのウルスラという少女が登場するが、彼女が描いた絵のモデルとなった作品が青森県立美術館に展示されていることをあなたはご存知だろうか。
そのタイトルは「天馬と牛と鳥が夜空をかけていく」(1976)。八戸市立湊中学校の養護学級の生徒が制作した版画作品だ。
魔女の宅急便では、ウルスラがキキをモデルにしてこの絵を描く。思うように魔法が使えなくなってしまったキキに、ウルスラが自分の経験を語りながら描いているということもあり、作中でも印象深いシーンだ。
しかし、どうして青森の生徒が制作した版画がモデルとなったのだろうか。Jタウンネットは4月2日、青森県立美術館に詳しい話を聞いた。
宮崎監督の義父が...
実は宮崎監督の妻・朱美さんは、1950年代~80年代にかけて全国的に盛んだった版画教育をけん引していた教育者であり版画家の大田耕士さんの娘である。青森県立美術館の学芸員は、
「宮崎監督も教育版画を認知していたということで、この作品を劇中に起用することに至ったと聞いています」
と話している。青森は全国でも特に版画教育に力を入れていたという。
「天馬と牛と鳥が夜空をかけていく」は4枚の連作「虹の上をとぶ船 総集編Ⅱ」のうちの1作品。生徒たちにとって身近な海を舞台にしたファンタジーの作品シリーズだ。
生徒を指導したのは坂本小九郎先生。総集編Ⅱのほかにも総集編Ⅰ(4枚)と完結編(1枚)があり、養護学級の生徒とともに制作したという。学芸員は坂本さんがこの作品に込めた思いについて、
「作品には人と人、人と自然といった様々なつながりが刻まれており、子どもたち一人ひとりの世界がとけあい、一つの壮大なファンタジーとなって表現されている。坂本先生が仰るように、ここには『普遍的な豊かな魂の世界』がある、と言えます」
と話している。
「天馬と牛と鳥が夜空をかけていく」の大きさは横181センチ、縦90センチほど。青森県立美術館に7月12日まで展示されている。