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広島の未来は「AI人材」が変える 逆転の発想が生んだ「革新的プロジェクト」の全貌

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2020.02.14 12:00
提供元:広島県
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「広島県が進めている『AI人材の育成プロジェクト』を取材してみないか?」

ある日、そんな話がJタウンネット記者の元に舞い込んだ。

プロジェクトの名前は「ひろしまQuest(クエスト)」。ごく簡単に概要を説明すると、県内の企業や自治体が抱えているさまざまな課題を、データサイエンティストを育てるための「生きた教材」として活用。その結果として、

「AI人材の育成」×「地元の課題解決」

を同時に達成しようとする取り組みなのだという。

目標は壮大だが、具体的にどのような形で実現するつもりなのだろうか。そして、この取り組みが進むことで、広島の街はどう変わっていくのだろうか。プロジェクトについて調べれば調べるほど、多くの疑問が湧いてきた。

となれば、広島に行くしかない。

2020年1月某日。Jタウンネット記者はプロジェクトの中心メンバーに詳しい話を聞くため、広島市内のイベント会場を訪れた。

そもそも「ひろしまQuest」って何?

まず、プロジェクトの現状について整理しておこう。

ひろしまQuestの本事業は、20年4月以降のスタートを予定している。これは、企業や自治体が現在抱えている課題をビッグデータと共にオープンな場に提供。それに対して、データ分析を活用した解決法を参加者が自由に提案し、コンペ形式で競っていくというものだ。

こうした枠組みの創出に向けて、現在プロジェクトは準備段階。「プレQUEST」と題して、本事業スタートに向けた人材育成および事業の周知活動を進めている状況だ。

プロジェクトのスケジュール。ひろしまQuest公式サイトより
プロジェクトのスケジュール。ひろしまQuest公式サイトより

「プレQUEST」では、データ分析を学習したいと考えている県内外の人材を対象に、オンライン(e-ラーニング)とオフライン(勉強会)の両面から学びの場を無料で提供。学習教材の提供や勉強会の運営などは、AI関連事業を行うSIGNATE(東京・千代田区)の協力を受けている。

こうした学習プログラムを実施した上で、広島県が抱える課題について参加者が議論し、解決法を提案するアイディアソンを3月に行う予定。こうした人材育成、課題解決に向けたアイデアの提案が、これから始まる本事業につながっていくわけだ。

少し駆け足の説明になったが、ここまでが「ひろしまQuest」をめぐる現状だ。もう少し詳しい説明が知りたい場合や、実際にe-ラーニングの講座を受けたいと思った人は、ひろしまQuestの特設サイトを確認してほしい(e-ラーニングの受講期間は3月31日まで)。

ひろしまQuest特設サイトはこちらから
ひろしまQuest特設サイトはこちらから

さて今回、記者が訪れたのは、「プレQUEST」の一環として行われている「ハンズオン勉強会」だ。

勉強会は単なる座学ではなく、グループワーク形式でデータ分析を実践的に学ぶ内容。講師を務めたのは、SIGNATEでシニアデータサイエンティストを務める高田朋貴氏。今回の勉強会の特徴について話を聞くと、

「実際のデータ分析のプロジェクトも、基本的にはチーム単位で進めます。参加者がディスカッションを交わしながらアイデアを形にしていくことや、様々なスキルを持った人が協力していく点など、非常に実践的な形式になっていると思います」

という。

熱気あふれるハンズオン勉強会の様子
熱気あふれるハンズオン勉強会の様子

年齢や性別を問わず、積極的に意見を交わしていく参加者たちの熱気に触れた記者は、プロジェクトの中心メンバーで、広島県商工労働局イノベーション推進チームの金田典子課長に詳しい話を聞いた。

なぜプロジェクトを始めたのか

「ひろしまQuest」プロジェクトを引っ張る金田氏
「ひろしまQuest」プロジェクトを引っ張る金田氏

――そもそも、なぜAI人材を育成する「ひろしまQuest」を始めようと思ったのですか?

金田:まず、「ひろしまサンドボックス」という実証実験プロジェクトを進める中での実体験がベースにあります。プロジェクトの一環で色々な企業や市町村の話を聞いていくと、どうしてもデジタルテクノロジーを扱う人材が不足しているという声が多かったんですね。

やっぱり、デジタル分野に強い人材は首都圏に集中してしまう。じゃあ、地方としてはどうしたらいいんだろう。今いないのであれば、育成していく必要があるんじゃないか。そういった危機感から、ひろしまQuestを始めました。

――今回のプロジェクトの一番の特徴は、「AI人材の育成」と「地元の課題解決」が同時に実現できることにあると感じました。この点について、詳しく伺えますか。

金田:おっしゃる通り、ひろしまQuestは人材育成と地元の課題解決という2つの課題を、1つのプラットフォームで同時に解決していきましょうという取り組みです。ただ、どちらの比重が大きいかと言われれば、先ほども話したように育成の方が主体となります。

単に座学でデータ分析を学ぶだけでなく、もっとリアルなビジネスを知ることができる学習の場があったら、より実社会で活躍できる人材を育てることができるんじゃないか。

本音を言えば、そのための「教材」として、県内の企業にリアルな課題を提供してもらうという側面が強いです。

――逆転の発想と言えそうですね。AI人材を育成するために、地元が抱える課題を資産のように活用すると。

金田:県内の大学でも、データ分析などの専門学科が生まれています。ですが、AIについて学習する環境は整ってきているのに、学生たちがリアルなビジネスに触れる場が少ないという悩みがあるそうです。

そもそも、大学と企業と出会う機会自体があまりないと聞きます。あったとしても、企業がセミナーや公開講座を学生向けにやるくらい。

だったら、私たち県の商工労働局がリソースをかけて、アカデミアと県内の企業を結び付けるフィールドを作ってしまおう。そうした場作りは、行政という立場だからこそできるんじゃないかと考えました。
ひろしまQuestのビジョンを語る金田氏
ひろしまQuestのビジョンを語る金田氏

――AI人材と地元の企業が触れ合う機会そのものにも大きな価値がありそうです。

金田:これまでは、いくらAI分野に強い人材を育成しても、県外に流出してしまうという課題がありました。なので、県で育った子供たちが、そのまま県内で活躍してもらう流れを作りたいんですよ。

そう考えたときに、地元の企業が具体的にどのような課題を抱えているかを知る機会があるというのは大きいですよね。今回のプロジェクトには、そこの狙いもあるんです。

例えば、広島出身で県外の大学に行っている学生にも、ひろしまQuestに参加してもらいたい。そこで「地元にこんな課題があるなら、自分が身に着けたスキルを活かせる。じゃあ、広島に帰っちゃおうかな」となってくれたら理想ですよね。

もっとスケールの大きい話をすれば、ひろしまQuestで地元の課題を知った人材が、広島で新しいビジネスを起こすようになって欲しいんです。将来的には、そうした起業家たちが、県内企業のベンダー役として地元の課題を解決していく。それがゴールですかね。

今後の展開は...?

――ここまで話を聞いていて、かなり先進的なプロジェクトだと思いましたが、似たような取り組みをしている自治体はあるのでしょうか?

金田:正直、自治体レベルではかなり進んでいる取り組みだと思います。単に座学のプログラムを用意することは別として、今回のような特徴的な形での取り組みは、行政としてはたぶん例がないじゃないでしょうか。

――プロジェクトの展開についてお伺いします。来年度からは企業や自治体からデータをもらって、課題解決を進めていく段階に入りますが、どれくらい進んでいますか。

金田:これからですね。基本的には、課題やデータを提供していただける企業に声をかけていく形になると思います。課題を抱えている企業は多いと思うので、これから話をしていく中で、企業側の意識を高めていければ。

後は、ひろしまサンドボックスで走っているプロジェクトとのコラボも考えています。

宮島のAI観光や、アイグランのIoT保育などのプロジェクトで、現在進行形で様々なデータが集まっているんですよ。そのデータをひろしまQuestに放り込んでみたら、新たなイノベーションが生まれるかもしれない。そういったアイデアもあります。

――最後になりますが、来年度からのプロジェクトがどう進んでいくか、具体的に教えてください。

金田:構造としては、SIGNATEさんが運営する「SIGNATE Quest」というAI人材開発のプラットフォームを使います。その中に、ひろしまQuestという箱のようなものを作ってもらいます。そこに、地元の企業からの課題がどんどん追加されていくイメージですね。

ひろしまQuestの会員であれば、誰でも課題を閲覧できて、コンペにも挑戦できる形になる予定です。

それだけでなく、オフラインの企画も何らかの形で続けていきたいです。参加者が今日(編注・ハンズオン勉強会)のように声を出してコミュニケーションを取って、密度の高いナレッジ共有をしていく形は絶対に必要だろうと。

オンライン、オフラインの両輪でデータサイエンティスト育成の場を継続的に構築していくのが、ひろしまQuestの役割になるのかな、と。

「地元に貢献したい」参加者の思いは

ハンズオン勉強会の様子
ハンズオン勉強会の様子

ここまで話を聞いていて、プロジェクトを進めていく側の熱意は十分に伝わった。

それでは、参加者の方はどんな思いでひろしまQuestに参加しているのだろうか。この日の勉強会に出席していた、広島工業大学大学院の佐々木玲生さんに話を聞いた。

もともとデータサイエンティストを目指していたという佐々木さん。ゼミの教授からの紹介でひろしまQuestを知ったという。

「もともとデータ分析には縁がありませんでした。なので、e-ラーニングから実践まで学べることに魅力を感じて、プロジェクトの参加を決めました。(実際に参加してみて)チームの皆で協力してデータ分析を進めるのは、やっぱり楽しいですね」(佐々木さん)

広島生まれ、広島育ち、さらに広島での就職を目指している佐々木さん。自分のスキルを広島のために使いたいという思いは人一倍強いそうで、地元の課題解決をテーマにしたアイディアソンに向けて、

「インバウンドをテーマにしたいと思ってます。広島を、京都とか奈良に負けない観光地にするためには、どうすればいいのかを考えてみたいです」

と話していた。

参加者の佐々木玲生さん(左)、光貞宏さん(右)
参加者の佐々木玲生さん(左)、光貞宏さん(右)

もう1人の参加者にも話を聞いた。広島市内の高校で教師をしている光貞宏さんだ。工業科目を専門としているそうで、自分の生徒たちにもAIやデータ分析について詳しく教えたいという思いから、学習の場としてこのプロジェクトに参加したという。

どちらの参加者も方向性は違うが、自分の学んだ知識やスキルを広島のために還元したいという思いは同じだった。どうやら、金田氏をはじめとしたプロジェクトのメンバーの思いは、参加者にも伝わっているようだ。

まだ、ひろしまQuestはプレ段階。だが、熱意溢れる参加者たちの話を聞いていると、未来の広島を支えていく人材を育てるというプロジェクトの目標については、すでに第一段階を達成しているように思えた。

<企画編集:Jタウンネット>

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