昆布屋だけど「お父さん預かります」 小樽で見つけた謎看板、その真相を店に聞いた
「お母さんはゆっくり買い物してください」
「お父さん預かります」の看板を掲げたのは15、6年ほど前。簑谷さんはその理由をこう話す。
「家族連れで観光に来てるとお父さんが疲れちゃって、『早く帰るぞ』とか『ホテル戻るぞ』というお父さんが多いんですね。お母さんはいっぱい買い物を楽しみたいので、そこで夫婦ゲンカが始まったりするんですけど」
当時店頭に立っていた蓑谷さんは、来店した家族連れの様子からそのようなことを感じ取っていたようだ。慣れない買い物で疲れてしまったお父さん、思わず本音を口にし、お母さんをイラっとさせてしまったのだろう。
...ということは、預けられたお父さんはお説教でもされてしまうのか。ここで最も気になるお父さんの行く末を聞いてみた。
「店内に休憩スペースを設けており、無料の昆布茶を提供しております。お母さんはゆっくり買い物してください、その間お父さんは預かってこちらで休んでいただきますという趣旨です」(蓑谷さん)
お母さんが昆布を選んでいる間に、お父さんは店内の休憩スペースでゆっくり休んでくださいね――。そんな声が脳内に聞こえてくる気がする。この看板はお父さんを邪険に扱うどころか、疲れってしまったお父さんを優しく気遣うものだったのだ。
「お母さんも預かります」という看板にもあるように、休憩スペースはお父さんに限らず誰でも使用することができる。昆布茶は休憩した人全員に振舞っているため、自ら預かられに来る常連さんがいるくらいだ。
本気でお父さんを預けるという人はあまりいないというが、当のお父さん方からは「お母さんも預かってくれよ」とのリクエストが多くかったとのこと。これを受けて「お母さんも預かります」看板を1、2年ほど前に設置した。これらは小樽市内に複数ある、利尻屋みのやの店頭に設置されている。
見どころがたくさんある小樽だが、時にはお父さんお母さん共に預かられ、ほっと一息つくのもいいかもしれない。