そろそろ刺される?夜逃げしたい? ワケありバンドマン向けの引っ越しプランがニッチすぎて怖い
「こんな読んでて辛くなる引越し業者のチラシある?」
そんな一文とともに投稿されたのは、ある引っ越し業者のチラシ。バンドマン用の引っ越しプラン「バンドマン引っ越し割」を展開しているようだが、その内容がツイッターで話題になっている。
注目すべきは、例に挙げている「バンドマンの引っ越し理由」だ。
「ファンに家を特定された
事務所の社長からバレずに夜逃げしたい
楽器を運ぶなら楽器の扱いが分かっている人に頼みたい
そろそろ恋人に刺される
引っ越し費用にお金を掛けるくらいなら機材が買いたい
夜型の生活に対応してくれる引っ越し屋がない ...etc」
バンドマンならではの理由...なのだろうか。楽器を運ぶなら~などはまだ分かるが、「そろそろ恋人に刺される」とはどういう状況なのだろうか。怖すぎる。
チラシをツイッターに投稿したのは4人組ロックバンド・ナードマグネットの須田亮太さん。須田さんの投稿には他のユーザーから、
「つ...つらいwww」
「恋人に刺されるは、もうバンドマン関係ないですね笑」
「なんだか...色々大変なのな バンドマン...」
「歌かと思うほどバンドマンの哀しみが網羅されてますね...」
といった声が寄せられている。
ドライバーもバンドマンということで、やけにリアルな理由。この文面だけでも生き抜く大変さが伝わってくる。
Jタウンネットは2019年11月21日、なぜこんなに辛い理由ばっかりなのか、このチラシの制作者に詳しい話を聞いた。
「バンドを続けるのって大変なんですよ」
引っ越しを行うのは、大阪を中心に活動するロックバンド「LucyCrown(ルーシークラウン)」に所属するジェイムス・ゴッドフィールドさん。作業が大変な時は手伝ってもらうこともあるというが、基本的には1人で活動している。
基本料金は2万円と驚きの安さ。バンドマンだけでなく、一般的な引っ越し、美術品や楽器のチャーター便など手広くやっているという。
ジェイムスさんは、こんなにも辛い引っ越し例になった理由をこう話す。
「バンドを続けるのって大変なんですよ。ただ無為に続けるだけならば出来るかも知れない、けれど表現した事を広く知ってもらう為には人気が出なきゃいけない。
人気が出るために安易にお客さんを増やそうと女の子に友達営業をかけて色恋沙汰に発展したり、知名度を上げるために焦って変な事務所に入ってみるもマトモじゃなかった、なんて事もバンドマンにはよくある話なんです」
さすが現役バンドマン、生々しい実態を教えてくれた。チラシを見た時は思わず笑ってしまったが、これを聞いてしまうと笑えない。決して誇張の表現ではなかったのだ。
一筋縄ではいかないというバンドマンの引っ越し事情。そもそも、ジェイムスさんはなぜバンドマン割を始めたのだろうか。
「自分も他の引っ越し屋で経験を積んできたのですが、バンドマンは敬遠されがちです。金はないし朝約束の時間に起きない、猫と暮らしている、片付けが下手、等々... 半分は合っているといえ、そんなのばかりではないのですが、イメージとして。
で、それなら偏見なくお金を安くして夕方からでも猫を膝に乗せたまま助手席にお客さんが座って現地まで向かってくれる運送屋が居ても良いんじゃないか、という所が発端です」
バンドマンだからわかるバンドマンのニーズに、うまく応えているようだ。
チラシは11月から、大阪の音楽スタジオに置いている。ジェイムスさんはツイッターで話題になったことについて、
「どんな形であれ面白がって貰えているのは嬉しいですね。発信した事を面白がって貰うのがバンドマンの仕事ですから」
と話している。