本当にここに手を入れるの...? 子どもが怯えるカニに触れるプール、水族館に設置の経緯を聞いた
深海の生き物に触れ合う機会を作りたい
取材に答えてくれたのは、展示を企画した普及課の担当者。タッチングプールは、生き物により一層の興味を持ってもらうために設置されている「お魚発見教室」の一環だという。
同じコーナーには他に3つのタッチングプールがあり、それぞれサメ類、磯の生き物、人間の角質を食べることで知られる「ドクターフィッシュ」が展示されている。なぜそこに、タカアシガニが選ばれたのだろうか。
「昨今、深海ブームですよね。当館でも、深海の生物の展示はしているんですけど、どうしても見るだけになってしまうんです。それをなんとか触らせてあげられないかなと考えていました。 その中で、ダメージを受けにくく、大型で観察しやすいものということで、タカアシガニをチョイスしました」
と担当者。どうやらタカアシガニは「深海」枠からの参加者だったようだ。
しかし、「ダメージを受けにくく」と聞くと気になるのは、「あしはとれやすい」という注意書きだ。
脚はどれくらいとれやすいのか。そして、これまでに取れてしまったことはあったのだろうか。
「今のところ展示していて脚が取れたことはないです。
ただ、ひっぱられちゃうと危ないですね。カニは危険を感じると、自分で脚を切り離して本体は逃げる、という習性があります。脚は脱皮を繰り返して再生できますが、飼育下ではうまく再生させるのは難しいです。
そういった話もして『脚だけは勘弁してください』と、甲羅に優しく触ってもらうようにしています」(担当者)
タカアシガニの体がもろいため、脚が取れてしまう、という話ではなかったようだ。
担当者によると、カニの脚はトカゲのしっぽのようなもの。皆さんも、タカアシガニと触れ合うときは甲羅に優しくタッチしてあげてほしい。
そして、タカアシガニとの触れ合いでは、甲羅の感触以外にも観察してほしいポイントがあるという。
「甲羅に付着してきている深海の生物にも注目してもらいたいです」
と担当者。タカアシガニは深海の岩のない場所で暮らしていて、その甲羅は他の生き物の住処になっているのだそうだ。
「今展示しているものには『ヒメエボシガイ』という付着生物が付いています。動かないし、貝のように見えますが、エビに近い生き物です。
水槽には解説員が常駐していますので、触り方をアドバイスしながら、こんな生き物もいるんだよ、とか、甲羅が他の生き物たちの良い住み場になっているんだよ、という話もしています」(担当者)
よく観察すると、ヒメエボシガイがエサを集めるための腕をのばしている様子を見ることもできるという。間近で見られるタッチングプールならではの光景だろう。
一見エキセントリックなタカアシガニのタッチングプールには、深海の生き物に興味を持ってほしい、深海の生き物に触れる機会を作りたい、という水族館の熱い思いが込められていた。