「県別 罵詈雑言辞典」(東京堂出版) 「県別 罵詈雑言辞典」がいまツイッターで話題になっている。全国の罵詈雑言を集めたユニークな書籍だ。編者は真田信治先生と友定賢治先生、共に方言学の権威である。東京堂出版から、2011年10月に初版発行されている。ツイッターに投稿されたのは、大阪弁と岩手弁のケンカを比較して、岩手弁がとてもかわいく感じるというツイートだった。これが、大きな反響を呼んでいる。いったいどんなケンカなのか? 「岩手の方言可愛いよな...」 岩手県のケンカ。「県別 罵詈雑言辞典」(東京堂出版)より Jタウンネット編集部はさっそく「県別 罵詈雑言辞典」を図書館で取り寄せてみた。岩手県のケンカは上の写真のとおりだが、一応、下に書き起こしておこう。 「おーっ、こりゃ、酒たりねぞっ。酒ぐれ、用意すてげじゃ」 「いってくれにしぇじゃ。いづまで飲んでるんだが」 「しゃべなったら。なぬが文句あるってが」 「うなごそ、誰さ向かってしゃべってるのや」 「なぬっ、やるってか」 「うん、いっつでも、相手になるじぇっ」 「うな、なったきするなよ。ふたずけるじぇ」 「やれるもんだったら、やってみろじぇ。このばかやろ」 「なぬっ、ばかやろだどぉ。うな、よくもそったらごどぬかすたな」 「うるしえっ」 ――「県別 罵詈雑言辞典」(東京堂出版)より いかがだろう。ケンカの様子は、完全にではないとしても、だいたい分かるのではないか。夫婦ゲンカのようでもあるし、兄弟ゲンカのようでもある。いずれにしても、身近な人同士のケンカだろう。 ツイッターには、こんな感想が寄せられている。 「岩手県おもしろいな?? 聞きなれないせいか不思議言葉~」 「『なぬっ』が可愛いw」 「岩手県の方言可愛いよな...」 「やってみろじぇでやられました」 「可愛い過ぎる。萌える。惚れる」 語尾に「じぇ」がつくことで、テレビドラマ『あまちゃん』を思い出す人も多かったようだ。 一方、岩手県民の反応はというと......。 「文章はかわいいのですが東北出身者がこれを見ると、キツイ漁業や山仕事で鍛えた体とドスのきいた声で再現されて非常に怖いこともお伝えいたします」 「岩手弁のじい様怒るとドスの効いた声で言うから実際めちゃんこ怖いです...」 また、こんな意見もあった。 「なじょしたごったべ...岩手県民なのにわがんねどこありすw」 「岩手県広いから方言が少し違ったりする」 「岩手弁とまとめられても地域で大分違うし、南部弁とまとめられてもやっぱり地域で違うからなかなかに説明に困る。 岩手も南部もくくりが広すぎでわがんねな...」 岩手県の面積は、北海道についで2番目に広い県だ。地域によって、方言も相当に違うらしい。南部には旧伊達藩だったところもあり、旧南部藩だったところとは、文化も言葉も多少異なっていたようだ。 「ほんとぬ『へらめぐ』やつだ」 小岩井農場から見た岩手山(Ansさん撮影、Wikimedia Commonsより) 「県別 罵詈雑言辞典」を広げ、他のページも読んでみよう。まだまだ罵詈雑言がたくさん記されている。いくつか紹介しておこう。いずれも、岩手の方言として取り上げられていたものだ。 「あいづぁ 『まで』だがら、なぬでも頼んだってわがねじぇ」 「あの人は『けち』だから、お願いしてもだめだよ」という意味だ。「まで」と言われているようだったら、何か払い忘れてないか、自らを顧みて、とっとと払うものは払った方が良さそうだ。 「まんず、くっちゃべるごど。ほんとぬ『へらめぐ』やつだ」 「まー、よくしゃべる。おんとに『おしゃべり』だ」ということだ。「くっちゃめぐ」やつ、とも言うらしい。「へらめぐ」とか「くっちゃめぐ」と聞こえたら、しゃべりすぎかもしれない。反省しよう。 「あの おなごたらす、おなごのけっつばりぼっかげでいっくれにしぇ」 こう言われたら、「あの『助べえ』は、女の尻ばかりおっかけている」ということだ。いやあ、ヤバイ、ちゃんと見られてるな、と理解して、くれぐれも行動には気を付けたい。 ただ耳に入ったとしても、それが罵詈雑言だとちゃんと気が付くかどうかは、別問題だ。発音やイントネーションも難しい。あなたに向けられた罵詈雑言を、「岩手県の方言可愛い」と言ってるだけかもしれない。 「県別 罵詈雑言辞典」、よく読んでおこう。