盗難防止のためだった? トイレ個室のカバン掛けが「二重」になった意外な理由
いまツイッターで話題になっているのが、トイレの個室のドア内側にあるフックだ(写真上、参照)。フックが2段になっているが、これはいったい何のためだろう?
あるツイッターユーザーが、これには盗難防止の対策で、昭和後期に普及したものと投稿して、反響を呼んでいる。
こうした情報に、ツイッターにはさまざまな声が寄せられている。
「下が鞄、上が上着用だと思ってました」
「分かっていても、荷物が多くて重い時は引っ掛かりがある、上にかけちゃうんですよね」
「フックの改良や上から覗けないように天井まで壁を伸ばしたりして、窃盗など犯罪をおこしにくい環境に変えてきたんですね」
実際のところ、トイレの中の2段フックは防犯対策のためなのだろうか?
Jタウンネット編集部は、メーカー4社に電話で話を聞いた。
当初は1本だけだったという
最初に聞いたのは、東京都千代田区に本社を置く「スガツネ工業」だ。建築金物や産業機器用部品メーカーだ。冒頭の写真、戸当りフックを製造している。
「長く伸びている部分はドアの緩衝(衝撃を和らげること)が目的で、先端にゴムが付いてます。物をかけるフックではありません。盗難防止の目的は、聞かれても、『関係ありません、違います』と答えるしかありません。聞いたこともないですね」
次に、東京都墨田区の「杉田エース」に聞いた。建築金物や建材を扱う専門商社だ。すると、「防犯という考えはまったくありません」と、ずいぶんあっさりした返事だった。
そこで、東京都千代田区の建築金物メーカー「エース」に聞くことに......。
フック付き戸当りを製造している。「盗難防止目的というのは一切聞いたことありませんね」とあっけなかった。「上の長い方が戸当り、下の短い方が荷物をかけるフックです」、断言されてしまった。
そこでJタウンネット編集部は、大阪のメーカーにも電話してみた。
答えてくれたのは、大阪市中央区に本社を置く「シブタニ」だ。建築金物や自動車用部品を手掛けるメーカーだ。広報担当者は、若い女性のようだったが、「ちょっと待ってください、詳しい者がおりますので、聞いてきます」とのこと。
30分ほど後に、電話がかかってきた。
「当初は1本だけで、ドアストッパーの機能と物をかける機能を兼用していたそうですが、盗難が増えたりしたので、2本にして、上から取りにくい形状にしたのが現在の製品だそうです」
さすが大阪商人だ。昭和後期の現場を体験した社員は、まだ社内に健在だったようだ。広報担当者の機転のおかげで、良い収穫があったと言えそうだ。
トイレの中の2段フックが防犯対策だったことは、大阪のメーカーで立証された。東京のメーカーでも、もっと年配の古参社員に聞くことができれば、あるいは違う回答が得られたかもしれないと、Jタウンネット記者は反省中だ。