盗難防止のためだった? トイレ個室のカバン掛けが「二重」になった意外な理由
当初は1本だけだったという
最初に聞いたのは、東京都千代田区に本社を置く「スガツネ工業」だ。建築金物や産業機器用部品メーカーだ。冒頭の写真、戸当りフックを製造している。
「長く伸びている部分はドアの緩衝(衝撃を和らげること)が目的で、先端にゴムが付いてます。物をかけるフックではありません。盗難防止の目的は、聞かれても、『関係ありません、違います』と答えるしかありません。聞いたこともないですね」
次に、東京都墨田区の「杉田エース」に聞いた。建築金物や建材を扱う専門商社だ。すると、「防犯という考えはまったくありません」と、ずいぶんあっさりした返事だった。
そこで、東京都千代田区の建築金物メーカー「エース」に聞くことに......。
フック付き戸当りを製造している。「盗難防止目的というのは一切聞いたことありませんね」とあっけなかった。「上の長い方が戸当り、下の短い方が荷物をかけるフックです」、断言されてしまった。
そこでJタウンネット編集部は、大阪のメーカーにも電話してみた。
答えてくれたのは、大阪市中央区に本社を置く「シブタニ」だ。建築金物や自動車用部品を手掛けるメーカーだ。広報担当者は、若い女性のようだったが、「ちょっと待ってください、詳しい者がおりますので、聞いてきます」とのこと。
30分ほど後に、電話がかかってきた。
「当初は1本だけで、ドアストッパーの機能と物をかける機能を兼用していたそうですが、盗難が増えたりしたので、2本にして、上から取りにくい形状にしたのが現在の製品だそうです」
さすが大阪商人だ。昭和後期の現場を体験した社員は、まだ社内に健在だったようだ。広報担当者の機転のおかげで、良い収穫があったと言えそうだ。
トイレの中の2段フックが防犯対策だったことは、大阪のメーカーで立証された。東京のメーカーでも、もっと年配の古参社員に聞くことができれば、あるいは違う回答が得られたかもしれないと、Jタウンネット記者は反省中だ。