高知の「カワウソ焼き」に意外なドラマがあった たった1人、独学で焼き続ける男性の思い
水族館の人気者「カワウソ」が、かわいい焼き菓子になっていた。
こちらが、カワウソ焼きである。なんともブサカワイイ。そのなんともユルいビジュアルはネット上でも話題になっていて、ツイッターには、
「高知!高知のカワウソ焼き!!!!」 「かわいさゼロでした」 「ぶ、ぶさ...かわ?」
といった反応が見られる。
このカワウソ焼きを販売しているのは、ニホンカワウソを市のシンボルにしている高知県須崎市の道の駅「かわうその里すさき」にある直販所「かわうそ市」。ラインナップは小豆あん・白あん・カスタードで、2個か3個入りのパックで売られている。値段は1つあたり100円だ。
しかし、そもそもなぜカワウソを焼き菓子にしようと思ったのだろうか。
Jタウンネットが、販売所や生産者に話を聞くと、「カワウソ焼き」をめぐる意外なドラマが明らかになった。
孤軍奮闘、自宅で生産中
このカワウソたちを焼いているのは山本考俊(たかとし)さん、現在68歳の男性だ。2012年10月頃から製造・販売を開始し、「かわうそ市」へ商品を卸し始めて8年目だという。
なぜ作り始めたのか、その経緯について山本さんは、Jタウンネットの19年9月27日の取材に次のように述べる。
「私がお客さんとして(道の駅へ)行ったとき、カワウソ焼きが売っていました。可愛らしいと思って、食べてみたら美味しかったんです」
当時を振り返る山本さん。しかしもう一度購入しようと思ったときには、道の駅からカワウソ焼きが消えていたという。道の駅の担当者によれば、確かに人手不足で一時販売を中止していた時期があったそうだ。
可愛いと思って食べていたのに。そう思った山本さんは、町おこしにもつながるという思いのもと、カワウソ焼きの機材を購入したという。
その後、友人を誘い2人で研究しながら、半年ほど家族や友人に試食してもらったと話す。
「道の駅の味とは違い、作り方だけ学びました。そして、ようやく固さや配合がわかってきました。それが7年前です」
しかし現在は友人が抜け、山本さん、たった1人で自宅にて製造していると話す。
「カワウソ焼きは自宅でつくっています。私はコンビニの経営をしておりまして、朝まで(コンビニで)仕事をして、そのあと焼いています。なかなか苦労をしております」
と少し寂しげだ。
遠方から尋ねる人から、違う所でも販売してほしいとの声もあるというが、
「機械が重いので、宣伝のためあちこちで、売ることはできません。何回かやったことはありますが、重いので、自宅で焼いて、道の駅にもっていきます」
と1人で製造するからこその苦労を述べた。
パソコンやネットには疎いらしく、ネット上に寄せられる反応は、わからないという。可愛いという声もあると伝えると、
「私も全然素人ですので、わからないことばかりです。(製造の)専門家の人がみたらおかしいと思うかもしれません。 ですが、みなさんに喜んでもらえるように、どうやって作ったら夜になっても固くならないのか考えたりしました。焼き方を変えてみたり、水の配合を変えてみたりして、今の柔らかい形になりました。喜んでもらえたら満足です」
客を飽きさせないように、春は桜あん、夏はレモンあんを用意。また秋は抹茶あんにするなど味への工夫も欠かさないという。
とにかく物腰やわらかな山本さん。可愛さにほれ込んで製造しているカワウソ焼き。
こんな情報を知っていると、きっと何倍も美味しく感じることだろう。高知県に訪れたときは、ぜひ「かわうそ市」へ足を運んでみてはいかがだろうか。