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東尋坊の「VR遊覧飛行」が斬新で楽しそう プロがドローン操縦→リアルタイムで映像鑑賞

笹木 萌

笹木 萌

2019.08.31 11:00
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福井県の観光名所「東尋坊」。柱状節理と呼ばれる約1キロにもわたる断崖はまさに絶景だ。

崖の先端ギリギリまで行き、海を見下ろすイメージが強い場所だが、実は意外な方法でも絶景を楽しむことができる。

それは、カメラを搭載したドローンとVRゴーグルを使った疑似飛行体験だ。

見た目はシュールだが、そこには絶景が(画像は左がタフィー@TO_tuffyさん提供、右が上野浩幸さんのフェイスブックより)
見た目はシュールだが、そこには絶景が(画像は左がタフィー@TO_tuffyさん提供、右が上野浩幸さんのフェイスブックより)

観光客が美しい海の傍ら、パイプ椅子に座りVRゴーグルを覗く姿は何ともシュールだ。しかしそこには、自分の位置からは見ることができない上空からの絶景が広がっている。澄んだ海の中には崖の根っこの部分も見えていて、まるで鳥になったような気分だ。

始まって4か月ほどのサービスだが、観光情報サイト「じゃらん」の口コミには、

「足の悪い母も東尋坊の美しい景色を満喫でき、良い思い出になりました」
「ドローン目線は遠近、上下、自由自在で、東尋坊の岩を間近に見たり、その全景を斜め上空から眺めたりできます」
「まるで小型飛行機に乗って空から見ている様でした!異空間にひきこまれます!画像もとっても綺麗でした!」

といった声が寄せられ、好評のよう。15分ほどの飛行を500円でできるという安さも魅力だ。

このサービスを提供しているのは、上野浩幸さん(56)。この「バーチャルスカイ」という観光サービス業を始めるために、今年3月に以前勤めていた会社を辞めたという。

いったいなぜこのサービスを始めたのだろうか。Jタウンネットは2019年8月29日、上野さんに話を聞いた。

15分500円で楽しめる

疑似飛行体験は約15分で500円の「仮想飛行コース」のほかに、自分でドローンを操縦している気分になれる「仮想操縦コース」(約15分で1000円)がある。

これは実際に観光客が運転するのは危険なため(ドローンは原則第三者の頭上を飛んではいけないなどの航空法がある)、観光客の操縦の動きを機械で把握し、上野さんが代わりに操縦するというものだ。

また、プラス500円で枚数無制限の写真撮影が可能。お客さんは20枚ほど撮っていくといい、画像データは携帯などに送るのこと。「上空から自分を撮りたい」という要望が多いそうだ。

上野浩幸さん(画像は本人のフェイスブックより)
上野浩幸さん(画像は本人のフェイスブックより)

10年ほど前、趣味でパラグライダーをやっていたという上野さん。鳥の目線で飛行することが素晴らしかったといい、この体験をより多くの人に共有できる方法がないかとずっと考えていた。

転機が訪れたのは2017年5月28日。上野さんは「よく覚えています。いきなり思いついたんですよ」と話す。子どもとサイクリングで訪れた海岸で、仕事でドローンを飛ばしている人を見かけ、「これは面白い機械だな」と思ったという。

ゴーグルと組み合わせてサービスを提供することを思いついたのは、その2、3日後のことだった。

その後、ドローン操縦者向け民間資格・DJIスペシャリスト認定と国土交通省の飛行許可を取得。元々技術職だった経験を活かし、ドローンの映像やヘッドフォンから流れる音楽を分配する装置や、「仮想操縦コース」で使うお客さんの操縦が表示される機械を自身で製作した。

この機械はお客さんの動かした方向がLEDで表示され、ランプの数でどれだけ移動させたいのかが分かるようになっており、すでに特許も取得済みだという。

美しい
美しい

2年弱の準備期間を経て、上野さんは前の職場を退社。19年4月1日に事業を立ち上げ、5月2日から東尋坊でサービスの提供を始めた。

「ほかの人が同じことを考えついて、やられてしまうととても悔しいので。私が最初にやりたいという思いがありまして(笑)実現のめどが立ちましたので退職しました」

「自由自在に海と空と岩場を移動できる」

現在は千葉の自宅を離れ、福井の実家やアパートを借り住まいとし、ほぼ毎日サービスを提供している。東尋坊を選んだのは、

「福井に実家があり、高齢の母のケアをしながらの自営業をしたいと思ってまして。また福井というと東尋坊が一番の観光地ですので」

という理由から。ワゴン一台あれば機材を積んで日本中どこでも行けるため、まずは地元で様子を見て他の場所での展開も考えるという。

日によって違った姿が楽しめる
日によって違った姿が楽しめる

サービスは「蒼浪閣」というお土産屋の軒下のスペースを借りている。これまでに来たお客さんは約280人。気候も関係してか、ゴールデンウイークの期間がピークだったようだ。「500円は安い」との声も上がっているそうだが、その価格にした理由を聞いてみると、

「このサービスって世界で誰もやってないんで、何をやってるかがまずわかんないんですよ。ドローンで撮った絵が綺麗だとは思っていないようで、ガタガタ揺れるイメージをお持ちで。でもまあ、試しに見てみるかーぐらいのノリで皆さん見ているんですね。価格を上げてしまうとハードルが高くなって、内容をご理解いただけない可能性がありますので」

とのこと。今はサービスを周知するためにこの価格にしており、知名度が上がれば価格を変える可能性もあるようだ。

「採算が合わないといってもドローンの充電代やガソリン代ぐらいですし、私の労働力だけなんですよね(笑)」

最後に、上野さんに東尋坊での疑似飛行体験の醍醐味を聞くと、

「自由自在に海と空と岩場を移動できるってことでしょうかね。空にあがって自由に空を飛び回っている、そういう感覚が味わえることですかね」

と話していた。

東尋坊に行った際は、ぜひ体験してみたいものだ。

サービスを提供している場所
サービスを提供している場所

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