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「お代は出世払いでもいいです」 奈良のとんかつ店が「無料食堂」を続ける理由

笹木 萌

笹木 萌

2019.08.18 11:00
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店長「お金がない人の気持ちはよくわかるつもりです」

無料食堂の取り組みを始めたのは2018年5月。それ以前からも、相談があれば弁当を渡したり、お金があるときに支払ってもらったりする形で食事を提供していた。

金子さんは無料食堂を始めたのには、自身の幼少期が関係しているという。

「幼少の頃から貧乏で苦しい思い、惨めな思いをしてきました。それでも、いろんな人のおかげで大人になることができました。お店を始めてからもうまくいかず、何度もつぶれかけていましたので、お金がない人の気持ちはよくわかるつもりです。

お店の経営に少しだけ光が見え始めたときに、そういう人を励ませるようなことができたら、せめて少しの食事だけでも頼ってもらえたらと思いました」

提供するメニューはとんかつ以外にも、カレーやエビフライ、からあげなどがある。一般のお客さんと同様、メニュー表から選ぶことが可能だ。

おいしそう(画像はまるかつのツイッターより)
おいしそう(画像はまるかつのツイッターより)

これまでの利用者はのべ260人ほど。ばらつきはあるが、1週間に1~2組のペースだ。利用者から電話などで事前に連絡が来る場合もあれば、お店に直接来ることもあるという。

「病気療養などが理由で収入が乏しく、リピートされるご家族もいらっしゃいます。緊急避難的にご利用いただくこともありますが、こちらから詳しい事情はあまり聞きませんので、理由などはすべて把握しているわけではありません」

金子さんは普通のお客さんと同じように接しているといい、「ほかのお客様が気付かれるというようなことも少ないと思います」と話す。

子どもが読めるようにひらがなで書かれている(画像はまるかつのツイッターより)
子どもが読めるようにひらがなで書かれている(画像はまるかつのツイッターより)

無料食堂をやっていて難しいと感じることはあるだろうか。金子さんに聞いてみると、

「特にありませんが、ごくたまに『無料キャンペーン』のようなものと勘違いして利用しようとされる方もいらっしゃいます。そのときは無料食堂のポスターを読んでいただいたりして、趣旨を説明したりしています」

とのこと。貼り紙の下の方には、

「いつも本当にありがとうございます。皆さまに支えていただいているおかげさんで、こういうアホなことができます。心配させてすみませんが、ご理解よろしくお願いします。不快に感じられましたらお詫びします。すみません」

と記載されている。一般客への理解を促していることも、大きな問題なく継続できる要因の一つであることが伺える。

無料食堂の目的は、大人も子どもも関係なく、お腹が空いた人にとんかつを食べてもらうこと。「少しでも励みになればうれしいです」と金子さんは話す。

2019年8月7日には夏休み中の子どもを気遣い、無料食堂の利用を呼び掛けるツイートを投稿した。無料食堂はこれまでに何度かメディアで取り上げられ、ツイッターでは応援や感謝の声が寄せられている。

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