地元人も「さっぱり意味がわからない」 東北地方に伝わる謎の踊り「ナニャドヤラ」とは
「ナニャドヤラ」と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか。日本語かどうかも怪しい単語だが、これは青森・岩手・秋田の一部地域に古くから伝わる踊りの名前だ。
ナニャドヤラ... 1音1音はっきり発音しないと噛んでしまう。これには苦戦している人も多いようで、ツイッターには
「落ち着いて言えば何とか言えますが、会話の中に自然な形で言うのは結構難しいですね」
「踊れる母でも噛みますね」
といった声が寄せられている。
どうやら、言いづらいことでも有名(?)らしいになりつつあるナニャドヤラだが、一体どんな意味なのか。その真相も謎に包まれているようだ。
現地に聞いてみるも...
ナニャドヤラは「ナニャドヤラ...」といった唄にのせて、太鼓の音に合わせて流れるように踊る。
道具などは持たないという共通点はあるが、踊り・唄・太鼓ともに各地で多少違いがあるようだ。「日本最古の盆踊り」といわれることもあるが、そもそも起源が分からないので、それについても定かではない。
ナニャドヤラが踊られるイベントの一つに「北奥羽ナニャドヤラ大会」がある。
令和初となる今大会は2019年8月18日に洋野町で開催され、今年で30回目を迎える。30回目と聞くと最近のように思えるが、地域振興課の担当者によればナニャドヤラ自体はイベントが始まる前も、地域の踊りとして踊られていた様子。町内外から1000人以上の踊り手が集まるという。
洋野町の公式サイトによると、旧大野村(種市町と合併、現・洋野町)では「ナニャドヤラ」または「ナニャトヤラ」と発音している。地域によっては「ニャニャトヤラ」あるいは「ナギャトヤラ」と発音するところもあるようだ。太鼓や踊りの雰囲気も現在では昔のような悠長さが失われつつあるといい、徐々に変化しているようだ。
ナニャドヤラの意味について、上述の担当者に聞いてみると「わからない」とのこと。ナニャドヤラの語源にはいくつかの説がある(詳しくは後述)が、その中でも近しいもの・支持しているものがないか聞いてみたが、特にないという。
青森県三戸郡新郷村では6月の第一日曜日に、キリストの墓前で「キリスト祭」が行われる。ナニャドヤラは「新郷村ナニャドヤラ芸能保存会」によってそこでも踊られるが、その意味を聞くと、
「さっぱり意味が分からない」(企画商工観光課の担当者)
やはり歌詞の意味がわからないものとして踊られているようだ。
ナニャドヤラの意味は諸説あり
岩手県九戸郡洋野町に住む元教員の工藤亨(すすむ)さんは、ナニャドヤラを独自に研究、「ロマンのナニャトウヤラ」という書籍を自費出版している。
工藤さんの書籍によれば、ナニャドヤラの意味にはいくつか説があるという。今回はその一部を抜粋する。
(1)ヘブライ(ユダヤ)語説
神学者・川守田英二の説。「ナニャドヤラ」は、イスラエルの軍歌に登場するヘブライ語の歌詞がルーツだとしている。
(2)三戸説
南北朝時代、長慶天皇が三戸郡の長谷寺に訪れた際に、「ナニャドヤラ」と聞こえるような歌を詠んだことをルーツとする説。
(3)農民の衰歌説
民俗学者・柳田国男の説。「何なりともせよかし、どうなりとなさるが良い」という意味から、農民の自暴自棄な哀歌と、男女間の恋歌、2つの意味で捉えられているようだ。
(4)試声説
唄い始めにおける「節回し」(調子、抑揚)の練習だという説。浪花節の「ナニハナニシテナントヤラ」と同じだとしている。
一般的には(1)と(3)が知られているが、そもそも日本語であるかどうかも定かでないようだ。
なお、工藤さんは書籍の中で、ナニャドヤラの世界に足を踏み入れると「泥沼に足を踏み込んだ状態になるため、この研究はやらないようにしている」という郷土研究家の言葉を紹介。その上で、
「まさにそのとおりの研究でありました」
と振り返っていた。