広島発のプロジェクトが、保育園の未来を変える!? 「新しい保育モデルを...」地元企業の野望
最新技術の導入は「目的ではなく手段」
ただ、今回のプロジェクトの狙いは、ルクミーのような新しいサービスを現場に導入することにあるわけではない。
それが本当に保育士にとってプラスになっているのか、慣れない機器の導入が逆にストレスになっていないか――。こうした観点から、専門家と共に分析を重ね、一つ一つ検証していくことに重きを置いているのだ。
実際、アイグランはルクミーの導入後、一般社団法人・ヘルスマネジメント協会の産業看護師とともに、保育士へのストレスチェックを実施した。まだ詳細な結果は出ていないというが、上述したようなヒアリング結果からみると、一定の成果はありそうだ。
このように、新たなサービスやシステムの導入ではなく、その「分析・検証」を重視している理由について、アイグランの担当者は、
「AI・IoT技術を保育現場へ導入することは、目的ではなく手段ですから」
と明言する。
「どういう保育園だったら保育士が働きやすいのか、どのような働き方が業界としてベストなのかを探っていく。つまり、AI・IoT技術と現場がうまく『調和』した保育のあり方、そのパッケージというか、モデルケースを作ることが私たちの目的なのです」
将来的には、こうしたモデルケースの創出によって、潜在保育士(資格はもっているが、保育士として働いていない人。全国に80万人近くいるとされる)の現場復帰など、業界全体の人材確保につなげていく狙いもあるそうだ。
実際、今回のプロジェクトにはアイグランだけでなく、広島市のあい保育園祇園(運営・あい福祉会)も参画。その目的は、複数の保育園を運営していない小規模の事業者が、上述のルクミーなどの新しいサービスを利用する方法を探るためだ。
「やはり、小さい事業者だと、新しいサービスに投資するのは大変です。そうした保育園に導入するためには、どんな方法がベストなのか。例えば、レンタルやシェアリングのような形でやれないだろうか。そうしたことを、あい福祉会さんと一緒に考えています」
取材の終わりに担当者は、「各地域の中でも『地方』に重点を置いて、全国で事業を展開しているのはアイグランくらいでしょう」とコメント。保育園の立地や事業の大小を問わず、業界全体が活用できるモデルケースを作るという今回のプロジェクトについて、
「そういった意味では、当社にしかできない取り組みだと思っています」
と話していた。
――広島の企業が県の支援を受けて進めているプロジェクトが、将来的に日本全国の保育園の光景を変えていくかもしれない。例えば、冒頭で触れたような「れんらくちょう」でのコミュニケーションが、より現代的な形になる可能性だって十分にある。
まだプロジェクトは始まったばかり。ウェブメディアの記者としてはもちろん、将来父親として保育園を利用するかもしれない一個人としても、今後の活動に注目していきたいと思えた。
<企画編集:Jタウンネット>