広島発のプロジェクトが、保育園の未来を変える!? 「新しい保育モデルを...」地元企業の野望
保育士の「心理的負担」を減らしたい
アイグランがまず目を付けたのが、保育士が業務中に感じる「心理的な負担」だった。
具体的には、子供たちの睡眠中の事故を防ぐための「午睡管理」業務を、最新のIoT技術でサポートできないかと考えたのだ。実際、アイグランが現場の保育士にヒアリングすると、
「自分1人で子供を見守ることの責任に、心理的な不安というか、ストレスを抱えています」
といった意見が出たという。乳幼児突然死症候群(SIDS)をはじめ、最悪のケースでは死につながる事故が発生する恐れもあるだけに、その心理的負担は相当なものだろう。
なお、多くの保育園では、おひるね中の乳幼児を保育士が5分ごとにチェックし、その様子をノートやプリントに手書きで記録している。アイグランの担当者によると、1人が複数の乳幼児を見守るため、チェック間隔が少しルーズになってしまう場面もあったという。
こうした状況を受けて、今回のプロジェクトでアイグランが最初に実験導入したのが、「ルクミー午睡チェック」というシステムだ。ITベンチャーのユニファ(名古屋市)が開発したもので、園児の肌着やパジャマに専用のセンサーを取り付けて使用する。
このセンサーが幼児の動きを感知し、睡眠中の体の向きなどを記録。タブレットなどに入れたアプリで確認できるほか、チェックシートを紙にプリントすることも可能だ。また、幼児がうつぶせなど危険な体勢になったらアラートも鳴るため、万が一の事態を招くリスクも抑えられる。
つまり、このルクミーを導入することで、保育士の心理的負担、業務負担の両方を改善できる可能性が高いのだ。実際、アイグランが導入から数週間後に、現場の保育士に改めてヒアリングすると、
「自分だけでは不安だった部分も、ルクミーがあるとダブルチェックができて、ストレスが軽くなった」
「うつぶせになるとアラートが鳴るので、安心できる」
といった好意的な声が出た。
一方、サービスに対するいくつかの要望も出た。こうした意見は開発サイドと共有し、現場の要望に応えられるような形を検討していくという。今回のプロジェクトにはユニファも参画しているため、密に連絡を取りながら進めていくことが可能だ。
今後は、ルクミー以外のサービスも導入予定。例えば、園児の遅刻や休み、お迎えの到着時間といった諸連絡を、従来の電話や手書きノートから、ウェブ上で行うようにする「キッズリー」というシステム。また、幼児の検温をスマート化するサービスの導入も検討しているという。