灯りのない深夜、神輿をぶん回す男たち... 謎だらけ「暗闇の奇祭」のルーツに迫る
毎年6月5日から6日未明にかけて、京都府宇治市で行われる県(あがた)祭り。沿道の灯火を全て消し、暗闇の中で梵天渡御(ぼんてんとぎょ)が行われる。別名「暗夜の奇祭」「暗闇の奇祭」とも呼ばれる、宇治市の代表的なお祭りだ。
暗闇の中で梵天と呼ばれる巨大な神輿を勢いよく回す姿は、熱狂的であると同時に異様でもある。Jタウンネットは宇治市歴史資料館や県神社に、そのルーツを聞いてみた。
近隣住民の協力で「暗闇」に
宇治市観光振興課によれば、毎年約500の露店が並び、客数は約10万人。6月5日午前10時から6日午前1時まで、県神社から御旅所までの道路周辺に交通規制がかかる。
梵天渡御は十数年前から二手に分かれており、令和初の開催となる今年も県神社と県祭奉賛会に分かれて行われることが決定している。
県神社と御旅所、それぞれから出発した梵天は「ヨイヨイ」の掛け声とともに進み、道中で「ぶん回し」、横に倒す「横振り」、上に持ち上げる「差し上げ」などのパフォーマンスが行われる。「ぶん回し」は特に、暗闇といえどカメラのフラッシュで辺りは明るくなるようだ。
渡御中は深夜ということもあり周辺の民家は明かりを消している。
特にお願いしているわけではなく、毎年のことなので自然と消してくれているとのこと。昔は明かりのついた家があると注意に入ったりしていたというが、近年ではなくなっているという。祭りの日だけ特別に電車の終夜運転などもかつては行っていたそうだが、今では行われていないようだ。
なぜ真っ暗なのか、聞いてみた
それにしても、なぜ暗闇でおこなわれるのだろうか。ネット上では「夜這い」が元となっているのではないかという情報も散見されるが、2019年5月27日に宇治市歴史資料館に確認してみると「今となってはよくわからない部分もあります」との回答だ。
県神社の宮司である田鍬到一さんは、暗闇で行われる理由について「一種のタブーだから、古い形式でやっています」と意味深に話す。
県祭りが行われるのは、新暦だと6月5日、旧暦だと5月5日。このころは茶摘みが終わってお茶が出そろう季節だったといい、田鍬さんは「(県祭りが)にぎやかになる一つの要素であったことは間違いないです」という。
県神社の場合、5日の朝御饌の儀、夕御饌の儀を経て、本殿で神移しという儀式を行ってから出発する。60人ほどの男性に担がれた梵天は旧大幣殿前でぶん回しや横振りを披露、その後は境内に戻り、6日深夜1時頃に還幸祭を終える。
梵天は境内にある「梵天奉納所」にある。5月下旬ごろに毎年作り直しているといい、使用する御幣(紙のようなもの)はおよそ1600枚。1年間奉ったあとは、焚き上げているという。
独特の雰囲気を楽しめる「暗夜の奇祭」、ぜひ足を運んでみては。