<東京暮らし(11)>「日本ワイン」が熱い!
<文 中島早苗(東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長)>
日本で造られるワインのクオリティが上がっているのをご存じだろうか。
ちなみに「日本ワイン」とは、日本国内で栽培されたブドウを100%使って、日本国内で醸造されたワインのこと。いまや、国内のワイナリーの数は303か所。1位が山梨県で81か所、次いで北海道と長野県がそれぞれ35か所となっている(2018年3月国税庁調べ)。
山梨、長野は東京からもアクセスしやすいので、私は昨年から両地を度々訪れては、ワイナリーを巡ったり、ワインを買って帰ったりしている。特に、山梨ワイナリー巡りは東京からのワンデイトリップも可能で、気軽な気分転換にもおすすめだ。
山梨ワイナリーの一例として、今回は「ルミエールワイナリー」について書いてみたいと思う。
勝沼の西南端にあるルミエールは、勝沼ぶどう郷駅からタクシーで約10分。ワイナリー見学希望の場合は、事前に申し込む(1時間コース1人1000円、30分コース1人500円)。毎年10月にはワインまつりが開催される。
130年以上の歴史をもつワイナリー
山梨ワインについて、木田茂樹社長に教えてもらった話を紹介しよう。
ここ山梨では明治初期、政府のお達しによりワイン造りが始まった。ルミエールの基となった、先祖の降矢(ル・ふりや)家は江戸時代からブドウ農園を営んでおり、1885(明治18)年、降矢醸造場として創業。以来今に至るまでブドウ栽培とワインの製造販売を続けている。
木田社長曰く「よいワイン造りはよいブドウ作りから。ブドウの質がワインの良し悪しを決める」。約3ヘクタールの自社農園では、自然に近い農法を実践。雑草の力を活かした草生栽培による循環型の農業に取り組んでいる。
温暖化の影響もあり、昔は栽培していなかったテンプラニーリョやプチ・マンサンなど新たな品種も取り入れる。伝統的に作ってきた甲州種は近年、和食との相性のよさが世界に認められ、ワインコンクールでの受賞や海外の和食店で使われるなど、新たな発展を遂げている。
「甲州種は今のジョージアからシルクロードを渡り、奈良時代に仏教徒が日本に持ち込んだという説があり、欧州で甲州ワインが評価されるのも理解できます。当社のある山梨は東京の隣県でアクセスもよいので、ぜひワイナリー見学やワインまつりなど、アクティビティも楽しみに来てください」(木田社長)
日本でワインが造られるようになった歴史に思いを馳せながら、甲府盆地と、遠くに南アルプスの山々を見渡せるワイン畑を散策する。その後、併設のレストラン・ゼルコバで「ヤマナシ・フレンチ」料理とともに、キリッと冷やされた白ワインなどをいただく。
ああ、思い出すと、今すぐにでもワイナリーに行きたい! 筆者が特に気に入ったのは、甲州種を瓶内二次発酵させたスパークリングワイン。夏にぴったりの辛口で、豊かな泡とシャープな酸味が日本の食事を引き立てる。
日本ワインを応援する意味でも、また時々、周辺の勝沼ワイナリー巡りを兼ねて訪れ、楽しみたいと思う。