奥多摩の山中に、要塞のような巨大工場があった マニア垂涎の絶景スポットを歩く
マニア必見、山中のトロッコ鉄道
一旦奥多摩駅に戻り、さらに工場に接近すべく線路の反対側に出て山沿いの道に向かう。歩みを進めると工場の設備が手を伸ばせば届かんばかりの距離に迫り、プラントをくぐるような場所もある。
全く人が出入りする様子がないので遠くからは廃墟のようにも見えるが、近づくと機械の動作音が大きくなってくるので、現役バリバリで稼働している工場だと実感できる。
道は工場の敷地内をくぐるように細く険しくなって行くが、ここで引き返すべからず。けもの道のような細く荒れた道になっても進んでいくと、さらに工場マニアの心をくすぐるモノが見えてくる。採掘した石灰石を輸送する無人トロッコ鉄道だ。マニアからは奥多摩工業曳鉄線の通称で呼ばれている。
谷底に橋を渡してちょっとだけ地上に出ているトロッコ。工場同様年季が入っているが、これも現役で稼働している。操業日にはケーブルで牽引されたトロッコが何台も連なって行き来する。山に登って行く側はカラで、下って行く側が石灰石を満載している様まで見ることができる。さらに山奥で今も奥多摩工業により石灰石が採掘されている証だ。
昔はこれらの石灰石は青梅線の貨物列車で運び出されていたが、今はすべてトラックに切り替わっている。その証に奥多摩駅のかつて貨物線があったエリアは線路が取り払われて、トラックやショベルカーが作業している。
また奥多摩駅に戻って掲示の地図をよく見ると、面白いことにこの曳鉄線、地図に路線が記載されていた。この先鉄道などないのにと知らないと不思議に思うが答えはこれだった。
曳鉄線が氷川工場から出て、トンネルを通り先ほど見た橋梁に出て、またトンネルに入るところまで正確に描かれている。右上の白い弧を描いているのは先ほどの水根貨物線のアーチ橋だ
ハイカーや釣り人でにぎわう奥多摩だが、彼らを乗せる鉄道ももとは鉱山開拓のために作られ、切り開かれていった。日原川のせせらぎがひびくのどかな町の中で、産業史を伝える生き証人として奥多摩工業氷川工場は今も稼働している。
ちなみに曳鉄線の現地に行かれる場合、道には「この先工場用地につき関係者以外立ち入り禁止」の旨の看板があちらこちらに立っているので、くれぐれも敷地内に立ち入らぬようお願いしたい。