動物園「着ぐるみ訓練」密着してみた 見た目はシュールだけど...職員は超マジだった
待ちに待ったオランウータンとの遭遇
状況が一変したのは14時5分ごろ。無線で正門の方に向かっているとの情報が入ってきた。すると警備員の動きが少しずつ慌ただしくなり、筆者も戦闘態勢に入る。
すると、奥から捕獲隊員が道具をもってぞろぞろと捕獲スポットへと入っていく。動物公園の外に出してはいけない――最後の砦を築いていった。
無線の交信頻度も高くなり、より詳細なものへと変わっていく。じわりじわりとオランウータンが近づいてきている。この時、14時10分、移動から既に1時間近く待っているだけに待ち遠しい。
今か今かと待っていたその時だった。14時15分、遠目ではあるがオランウータンが姿を見せた。かなり違和感のある着ぐるみだが、彼を待ち続けた者にとって感動の瞬間。その感情に応えるように捕獲スポットにオランウータンがやってきた。
網で囲われたスポットに入れば捕獲隊の優勢。網に向かって突っ込んでも棒で地面を叩く音や隊員の大声で包囲網の中心付近をウロウロするしかない。
ここでオランウータンは最大のピンチを迎える。麻酔銃を持った捕獲隊の車が動き出し、尻を狙う。
戸惑っているかのように包囲網の中をさまよっているその時だった。「パスッ」と空砲が控えめに鳴った。
この後、すぐに大人しくならないオランウータン。これも想定通りで、彼にとって尻に謎の痛みが走っている状態のため少し暴れる。
この後、段々と動きが鈍っていくのだが、この様子を見ていた子どもから「なんか変」などと笑われてしまう。真剣な訓練の中にいる間の抜けた着ぐるみ――笑うのも無理はない。そうこうしているうちに、歩くのを止めて倒れ込んだ。
本当に麻酔が効いているのかを確かめるため、車が近づく。車内から棒を取り出して身体をつつく。無線から「まだ少し動いているようです」と交信が入ると何故か大笑いの来園客。職員の真剣さと観客の笑い――不思議な空気感の中でラストスパートだ。
別の車がポイントに入り、網を用意。身体を包んで軽トラの荷台に積んで裏手に移動したところで訓練は終了した。