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阪急が「カモノハシ」に屈した日 関西「交通ICカード戦争」、ついに終結か

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2019.02.06 11:00
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2019年3月1日から、阪急電鉄・阪神電鉄・能勢電鉄・北大阪急行の4社でICOCAカード、ICOCA定期券の発売が開始される。すでに各路線の駅や電車でも告知ポスターを見かけるようになった。

一見ごく普通のポスターだが、「阪急がカモノハシに敗北」...とは、どういうことか。

阪急電車でICOCAをアピールするカモノハシのイコちゃん(うおん(@kamedanchi)さんのツイートより
阪急電車でICOCAをアピールするカモノハシのイコちゃん(うおん(@kamedanchi)さんのツイートより

実はこれ、ここに至るまでの関西私鉄(とりわけ阪急)とJR西日本の交通ICカードをめぐる「冷戦」の終結を象徴するかのようなポスターなのである。

ICOCA、関西私鉄を席捲

関西初の交通ICカードが導入されたのは、JR西日本のICOCAで03年11月1日から。次いで04年8月1日から後に関西の私鉄・バスを中心に普及するPiTaPaが導入された。最初の導入路線は阪急・阪神・京阪の3社で、以後地下鉄や私鉄へとエリアを拡大していく。

このPiTaPa、関東におけるPASMOのようなもの......と思ったら、さにあらず。

PiTaPaは日本のICカードとしては極めて珍しいポストペイ方式を採用した。すなわちカードにチャージするのではなく、「オートチャージ」として月ごとに利用運賃額が引き落とされるやり方だ。

したがって交通カードとクレジットカードの中間のようなもので、チャージを繰り返さなくてよいメリットはあるものの購入には審査が必要だったり、1か月間の利用枠に制限があったりする。

PiTaPaとICOCAは06年から相互利用を開始し、その後全国の鉄道路線に利用可能エリアを広げていくも、PiTaPaをエリア外で使う場合にはチャージが必要となる、つまり関西以外では他のプリペイド式ICカードと同じ使い方でないと電車に乗れず、電子マネーとしても使えない。

PiTaPaも相互利用エリアではプリペイド式のチャージに対応したり、オートチャージだけでJR西日本に乗れるようになったり、会社ごとに独自の割引を導入したりと利便性を高めていったが、この根本的な違いがあるので、「JRはSuica、私鉄はPASMO」という関東のような棲み分けとは違う構図になった。

12年以降に近鉄、南海、京阪など関西の私鉄各社はPiTaPaだけでなくICOCAの発売も始めるようになり、残っていたのが阪急阪神東宝グループに属する4社である。

PiTaPaの前にも、JRと関西私鉄が異なるプリペイドカードを採用していた。阪急が主導し、関西私鉄とバスに普及した「スルっとKANSAI」(96年導入)とJR西日本が97年から導入した「Jスルーカード」である。

この2つが定着した前史があって、関西の交通ICカードは「阪急を中心としたPiTaPa」と「JR西日本のICOCA」が二大ブランドとして共存してきた。しかし前述のように、その勢力図はICOCA優位でじわじわと勢力を広げつつあった。

そんな中でも阪急など4社は17年4月から新しく磁気カード「レールウェイカード」を発売して独自のプリペイドカードを使い続けてきた。

だが、わずか1年後の18年春にはこの4社もICOCAの発売を決定、19年3月から阪急や阪神でもJR同様にICOCAの定期券やカードを購入できるようになる。これによりわずか2年でレールウェイカードは廃止(19年2月末で販売終了)となり、関西のプリペイド式カードはほぼICOCAに統一された。

PiTaPaは引き続き購入も使用もできるので好みに合わせて使い分けられるが、このような歴史があるだけに阪急もついにICOCAに門戸を開いたことが、地元ではなかなか歴史的な出来事だったのだ。

というわけで、ICOCAのマスコットキャラクター・カモノハシのイコちゃんから「カモノハシが阪急を征服」というユーモアまで生まれた。

今春、阪急電車の車内にイコちゃんが出現してICOCAをアピールするまでには、ICカードをめぐってのこのような10年以上の暗闘があったわけだ。

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