「いちゃいちゃカップル」の騒音に、僧侶は何を思うのか【ご近所トラブル大賞2018】
Jタウンネットの人気コーナー「実録!ご近所トラブル」で、ずっと読まれ続け、編集部内では「殿堂入り」とまで称される1本の記事がある。
今回、東京・四谷「坊主バー」で毎晩のように人々のお悩みを聞いている浄土真宗本願寺派僧侶の藤岡善信さんに思い切って、殿堂入りの記事をぶつけてみた。
「やだぁ」とか「待てよぉ」がどんどん大きくなっていき...
【殿堂入り】「いちゃついて大きな音を出す、上の階のカップル。思い切って文句を言ったら...」(東京都・30代女性)
2016年9月25日に公開してから、時折、アクセスランキング上位に浮上してくるのがこの記事。東京都のAさん30代女性は、アパートに引っ越しの次の日からトラブルにあった。
やっと終わった引っ越しの疲れを取るためにゆっくりと寝転んでいると......。
2階からバタバタと追いかけ回すような音。その音はどんどんと大きくなり、「やだぁ」とか「待てよぉ」というようなイチャイチャするような喧嘩のような、とにかく大きな声が聞こえてきてきた。寝るどころではない。次の週も、その次の週も。週末になると聞こえてくる。
待ち伏せしてそのカップルを見てみると、意外にもとても温厚そうな、真面目風の若いカップル。これなら苦情を言っても聞いてくれるかもしれないと、思い切って声をかけた。すると、すぐに2人は謝ってくれ、投稿者が言ったことで初めて気づいたようだったそうだ。その後も騒音が気になることはなく、そのカップルは翌年引っ越して行った。
僧侶からの言葉――まさに「三界に家なし」
これは、円満に解決したということでしょうか。よかったですね。
まさに「三界(さんがい)に家なし」とこの投稿を読んで感じました。仏教には、欲界(よくかい)・色界(しきかい)・無色界(むしきかい)の3つの世界がありますが、そこは火宅無常(かたくむじょう)。火に包まれた家に住んでいて落ち着かない、休まるところがないという意味です。
この世にも休まる家がないと言えましょう。ですから、マイホームを建てようが、新しいアパートに引っ越そうが、隣人トラブルに巻き込まれることがあるかもしれないし、災害に見舞われるかもしれない。それが仏教の世界感です。
ですから、どこにいても何か起こるかもしれないという心持ちで生きていくと、何かトラブルが起こっても「こんなもんかな」と少しは楽になれるのではと思います。
この落ち着かない無常の世界をどうやり過ごすか。何千年も昔から、人の世は落ち着かないものだと考えれば、本当に休まることは難しい。だから人々は信仰をもったり、出家したりする。
この記事がずっと読まれ続けているということは、共感したり、自分と同じような苦労をしたりしている人がいると思って楽になっている人が多いのかもしれませんね。
共同体という考え方で、「みんなで苦しんだぜ」と多くの人が考えられれば、世の中はもっと平和になると思います。
(浄土真宗本願寺派僧侶、四谷「坊主バー」店主 藤岡善信 談)
坊主バー
https://vowz-bar.com/
住所:東京都新宿区荒木町6番地AGビル2階
電話:03-3353-1032
ツイッター 四谷 坊主バー(@yotsuya_vowzbar)
「いつでも開かれたお寺」をコンセプトにしたカジュアルでアットホームなバー。現役の僧侶の話に耳をかたむけ、人生を語り合うひとときを過ごしたいと、世界中から客が訪れる。1日2度ほどお経の時間がある。