日本一のソープ街を「食」で支える スタミナ満点、吉原の名店「焼肉 晃」
江戸時代の遊郭文化を代表し、2018年現在でも日本屈指のソープランド街として知られる東京・吉原。男と女の欲が渦巻く特殊な土地に住み、働く人々は、この街でどんな食事をしているのだろうか。
今回、Jタウンネット編集部は風俗店に対して聞き取り調査を行い、実際に利用している吉原の飲食店をピックアップ。その中から、「焼肉 晃(てる)」という店を訪れた。
どこのお店を使っているのか
筆者が吉原を訪れたのは2018年11月30日。スーツ姿の男性やこれから出勤するのか、ラフな服装にはちょっと見合わない濃い化粧の女性が通りを歩いていた。
平成の終わりに訪れたい「夜の街」で働く人を支えるグルメ。しかし、吉原で働く人が何を普段食べているのか。この場所で働いたことのない私には全くわからない。そこで実際にソープランドをめぐって聞き取り調査を行った。
約1時間、吉原のソープランドで頭を下げたが、お客でないことも災いしてか中々応じてくれない。その中で唯一、とある熟女系のソープランドのボーイが取材に応じてくれた。
利用客でもない筆者の質問に答えてくれたほか、この日出勤していた40代くらいの女性からも貴重なコメントを入手できた。
フロントにいた男性によると、いつお客さんが来るかわからない以上、店から出ることがないため、出前が中心。出前を行うチェーン店が近くにないため、個人経営の店の利用が主であるとの情報も得た。そこで普段から使うお店を何店舗かリストアップしていただいた。
このソープランドに勤めている女性は、仕事柄、体力を使うため、肉料理が嬉しいと話す。また、吉原と言えば馬肉料理が知られているが、うどんの名店も並んでおり、こちらもオススメしてくれた。
これらの情報を基にとある蕎麦屋に向かった。しかし、取材NG。ほかもNGや昼間だけの営業でお店が開いていないなど中々取材までたどり着けない。その中で1件、ようやく取材に応じてくれたお店が現れた。
壊れた自動ドアの先に
今回、取材に応じてくれたのは吉原大門から見て、最も奥にある京町通りの韓国家庭料理の店「焼肉 晃」。
奥の厨房にいた女性が料理を作り、もう一人男性がバイクで配達をしている。厨房の女性によると、もっぱら配達がメイン。店舗は配達先のボーイさんから、お店でも食べたいとの要望があり開けているという。
テーブルにはロースターも付けられているが、焼肉店としての営業はしていない。定食類のほか、カルビスープやユッケジャンといったスープ類がお店のウリだ。
今回は定食類の中からスタンダードな「焼肉定食」(税込900円)を注文した。
まずはナムルからいただく。酸味の締め付けが舌をいたずらする。咀嚼をしてくうちに酸味から解放された野菜の甘みが西ベルリンへと向かうトラバントのように押し寄せた。
ナムルと同じ更に盛られたキュウリのキムチも辛さは控えめ、これが引き立て役となって甘さの存在感が強い。野菜類はどれも甘みの主張があるやさしい味であった。
主役の焼き肉は塩味とほんの少しの辛み、そして重みのある甘さの感じられるタレを身にまとっている。水気が少ない下敷きのキャベツはたっぷりのタレと混ざることで程よい食感。このコンビネーションは中日ドラゴンズの「アライバ」コンビのゲッツーのような美しさだ。この鮮やかさを前に米が進んでしまう。
刺激的な味のプレイで疲れたら、卵入りの味噌汁で落ち着ける。さっぱりとした味噌にたまごの滑らかな触り心地が快感に痺れた感覚を癒してくれる。
どの料理も欠けてしまってはいけない。食べ終わった後の満足感だけでなく「この後も頑張ろう」とやる気が湧くような料理のチームプレーに後押しされ、取材を終えた。
取材を終え、店を出たのは19時前。花の金曜日に何かを求める男たちの姿をよそに、記者は次の取材先に向けて車を走らせた。
(Jタウンネット編集部 大山雄也)