国も認めた名浴場、歴史に触れる混浴体験 温泉守る「タオル禁止」ルールも【群馬・法師温泉】
<連載>混浴女子とめぐる!ニッポン秘湯図鑑
第四回 群馬・法師温泉 長寿館 文・写真:蜜月檸檬
毎回ひとつの混浴温泉にスポットを当てて魅力をお伝えしている連載第四回目。
今回は、明治時代から続く混浴の大浴場が風格ある「法師温泉 長寿館」をご紹介します。
「法師温泉 長寿館」は、歴史ある温泉の多い群馬県北部の山間にあります。
一世紀前に建てられたルネサンス風の「鹿鳴館様式」の混浴大浴場が特徴的な温泉旅館です。
一世紀前の時代を感じる混浴体験
美しい鹿鳴館風の木造建築の広い内湯に静かに響く出湯の音。
浴槽の底に敷き詰められた玉石の間から、こぽこぽと自然湧出する源泉が湯船を満たしています。
幻想的に湯気を浮かび上がらせるアーチ窓からの優しい光と灯篭の明かり。
温泉と木の香りに包まれた天井の高い大空間が浴場に広がっています。
開放的な露天風呂の混浴も良いですが、歴史ある内風呂の混浴は時代を肌で感じることができます。
旅館の許可をいただき、立ち寄り入浴が始まる前に撮影をさせていただきました。
その後、私もそのまま立ち寄り入浴へ。営業開始と同時に、待っていたお客さんがどっと混浴大浴場へ入ってきました。4つの浴槽はそれぞれ中央が丸太で仕切られているので全部で8つに分かれていますが、全てがあっという間に人でいっぱいに。
人が多くても広いので窮屈には感じません。入浴に時々訪れるという隣の浴槽の男性とおしゃべり。立ち寄り入浴は比較的いつも賑わっているようですが、平日は空いている日もあると仰っていました。
大浴場ではバスタオルなどの利用はできません。慣れない女性は少し恥ずかしいかもれませんが、タオルの繊維や残っている洗剤などから温泉を守るためでもあります。
湯守の方が小皿に乗った石鹸を浴槽の横に並べていました。板の間で体を洗うことができるそうですが、歴史ある大浴場の雰囲気にすっかり酔いしれていた私。石鹸が綺麗な白い石に見えて伝統的なものかと思って、「これは何ですか?」と聞いてしまいました。
そんな勘違いをしてしまうほど、この混浴大浴場は一世紀前の世界にいるような神秘的な雰囲気に包まれていました。
国登録有形文化財に指定されている「法師温泉 長寿館」
「法師温泉 長寿館」は、創業140周年を迎えた伝統ある老舗旅館です。
1895年(明治28年)築の混浴大浴場「法師乃湯」のほかに、本館と別館も国の登録有形文化財に指定されています。
旅館の方にもお話を伺うことができ、混浴に対するイメージやマナーの問題などから混浴温泉は年々減っていますが、家族みんなで笑い合って入ることができる伝統的な混浴を大切に残していきたいという思いで、歴史のある「法師乃湯」に誇りを持って存続されていることが伝わりました。そのお気持ちが、美しく手入れされた建物やおもてなしにも表れているのだと感じました。
明治時代の混浴の光景が目に浮かぶ百年以上守られてきた混浴大浴場が、湯けむりに包まれた時間旅行へ連れて行ってくれますよ。