北斎通りで「江戸」に思いを馳せる【本所七不思議めぐり(2)錦糸町編】
足が突き出したり太鼓が置いてあったり
そのまま北斎通りを両国方面に向かってひたすら進み続け、津軽稲荷やスカイツリーを横目に次のスポット「足洗い屋敷(足洗邸とも)」を目指す。
屋敷の天井から「足を洗え」と野太い巨大な足が突き出してくるという、なかなかパワフルなこのエピソード。本所七不思議の中でも比較的場所がはっきりしていて、当時の絵草子『七不思議葛飾譚』などにも「本所三笠町にあった旗本の屋敷」と書かれている。本所三笠町は現在の亀沢3~4丁目あたりで、ちょうど北斎通りの途中にあるのだ。錦糸町駅北口から10分もかからずにたどり着く。
現在は別に周囲に屋敷があるわけではなく屋敷跡などもない。「この辺りでそんなことがあったんだなあ」と思いを馳せるにとどまる。平屋ならともかく、マンションとかであれば、天井から足が突き出したら、上階の住人が真っ先に疑われそうだ。
そのままさらに北斎通りを進む。そろそろ江戸東京博物館の姿が見えてくる、というあたりまで来ると、メタリックな「すみだ北斎美術館」を後ろに擁した「緑町公園」に着く。ここが「津軽の太鼓」のスポットだ。
個人的には本所七不思議の中でも最も不思議感がないエピソードなのだが、この緑町公園はかつて弘前藩津軽家の上屋敷があった場所だ。屋敷内には火の見櫓があり、普通は異常を知らせるために叩く板が吊るしてあるはずが、なぜか津軽家の櫓には太鼓が吊るされていたという。
吊るされているのは板だが、叩くと太鼓の音がするという別バージョンもある。いずれにせよ、不思議だろうか。いや、太鼓でもよくない? 担当者(?)の好みじゃない? 叩き方次第で太いビートの太鼓音も出せたんじゃない? などと情緒のない考えが頭を駆け巡る。当時の不思議の沸点は低かったのかもしれない。
現在の緑町公園には櫓はもちろん、太鼓もない。ドラムンベース好きな若者が集まったりすることもなさそうなので、太鼓の音とは無縁そうだ。
ようやく両国に到達しつつある。両国橋を目指して本所七不思議巡りを完結させよう。(つづく)