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北斎通りで「江戸」に思いを馳せる【本所七不思議めぐり(2)錦糸町編】

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2018.07.29 17:00
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「本所(現在の墨田区周辺)七不思議」巡りのはずが、なぜか江東区亀戸から始まった「置いてけ堀を探して、猛暑を行く【亀戸&錦糸町編】」につづき、いよいよ本所ど真ん中、錦糸町~両国エリアへと入っていきたい。まだ「置いてけ堀」しか巡っていないが、ここからは残りの不思議も一挙に巡る。

念のため再度挙げておくと、七不思議ではあるが、その内容は伝承によって差があるため、よく聞く8エピソード、「置いてけ堀」「片葉の芦」「送り提灯(ひとつ提灯とも)」「足洗い屋敷」「狸囃子」「消えずの行燈(もしくは燈無蕎麦)」「津軽の太鼓」「松浦家の椎の木(落ち葉なき椎とも)」を、本所七不思議としている。

割下水周辺は当時の怪奇スポットだった

前回は亀戸駅から京葉道路沿いに進み、錦糸町駅南口に到達したが、ここから北口に向かう。目指すのは「北斎通り」だ。この北斎通り、今でこそ車が行きかう道路になっているが、実はその下には暗渠化された水路がある。

名前ほど浮世絵感や北斎感はないです(2018年7月記者撮影)
名前ほど浮世絵感や北斎感はないです(2018年7月記者撮影)

江戸時代に作られた「割下水(わりげすい)」と呼ばれる堀状の水路で、本所には排水のためにこの割下水がいくつか設けられていたのだ。

今でこそ目にすることはできないものの、北斎通りの下にはかつての「南割下水」が存在する。やや北に位置する春日通りのあたりが、「北割下水」だ。割下水巡りも江戸の都市計画や行政区域を知るうえでかなり面白いのだが、今回は割愛しよう。

この下に割下水が眠っている(2018年7月記者撮影)
この下に割下水が眠っている(2018年7月記者撮影)

本所に割下水が複数あり、身近な存在だったが故の必然かもしれないが、本所七不思議にはこの割下水周辺で起きるものが多い。

例えば、南割下水には夜になると蕎麦の屋台が出ていたそうだが、中に一つだけ、行燈の明かりがついているのにいつまでたっても主人が現れないものがあるという「消えずの行燈(行灯がついていないというバージョンは「燈無蕎麦(あかりなしそば)」となる)」。今ならさしずめ自動化された無人コンビニ、みたいなものであろうか。

何もない所に提灯の明かりのようなものが現れ、追いかけると消えるがまた別の場所に現れる、という「送り提灯(ひとつ提灯とも)」も割下水周辺(どの割下水かは伝承によって異なる)で見かけられたとされており、明かりが拍子木の音に置き換わった「送り拍子木」も同様だ。

さらには、どこからともなくお囃子の音色が聞こえるという「狸囃子」も、いずれかの割下水付近で音が聞こえなくなる、というパターンになっている。

これで一気に3エピソードを消化する。生憎記者が北斎通りを歩いたのは昼間なので、蕎麦屋も提灯もお囃子も見聞きしなかったが、夜に歩いたとしても、都会の喧騒に紛れて見落としてしまうかもしれない。七不思議も成立しづらい時代だ。

足が突き出したり太鼓が置いてあったり

そのまま北斎通りを両国方面に向かってひたすら進み続け、津軽稲荷やスカイツリーを横目に次のスポット「足洗い屋敷(足洗邸とも)」を目指す。

北斎通り沿いにある津軽稲荷。暗がりの中には何かがいるような気も(2018年7月記者撮影)
北斎通り沿いにある津軽稲荷。暗がりの中には何かがいるような気も(2018年7月記者撮影)

屋敷の天井から「足を洗え」と野太い巨大な足が突き出してくるという、なかなかパワフルなこのエピソード。本所七不思議の中でも比較的場所がはっきりしていて、当時の絵草子『七不思議葛飾譚』などにも「本所三笠町にあった旗本の屋敷」と書かれている。本所三笠町は現在の亀沢3~4丁目あたりで、ちょうど北斎通りの途中にあるのだ。錦糸町駅北口から10分もかからずにたどり着く。

むしろ記者が足を洗いたい気分でした(2018年7月記者撮影)
むしろ記者が足を洗いたい気分でした(2018年7月記者撮影)

現在は別に周囲に屋敷があるわけではなく屋敷跡などもない。「この辺りでそんなことがあったんだなあ」と思いを馳せるにとどまる。平屋ならともかく、マンションとかであれば、天井から足が突き出したら、上階の住人が真っ先に疑われそうだ。

そのままさらに北斎通りを進む。そろそろ江戸東京博物館の姿が見えてくる、というあたりまで来ると、メタリックな「すみだ北斎美術館」を後ろに擁した「緑町公園」に着く。ここが「津軽の太鼓」のスポットだ。

広々とした普通の公園です(2018年7月記者撮影)
広々とした普通の公園です(2018年7月記者撮影)

個人的には本所七不思議の中でも最も不思議感がないエピソードなのだが、この緑町公園はかつて弘前藩津軽家の上屋敷があった場所だ。屋敷内には火の見櫓があり、普通は異常を知らせるために叩く板が吊るしてあるはずが、なぜか津軽家の櫓には太鼓が吊るされていたという。

不思議かなあ? どうかなあ(2018年7月記者撮影)
不思議かなあ? どうかなあ(2018年7月記者撮影)

吊るされているのは板だが、叩くと太鼓の音がするという別バージョンもある。いずれにせよ、不思議だろうか。いや、太鼓でもよくない? 担当者(?)の好みじゃない? 叩き方次第で太いビートの太鼓音も出せたんじゃない? などと情緒のない考えが頭を駆け巡る。当時の不思議の沸点は低かったのかもしれない。

現在の緑町公園には櫓はもちろん、太鼓もない。ドラムンベース好きな若者が集まったりすることもなさそうなので、太鼓の音とは無縁そうだ。

ようやく両国に到達しつつある。両国橋を目指して本所七不思議巡りを完結させよう。(つづく)

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