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南房総の農家が「イタリア野菜」にこだわって生産する理由

松葉 純一

松葉 純一

2018.07.10 06:00
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プンタレッラ(画像提供:田倉ファーム)
プンタレッラ(画像提供:田倉ファーム)

千葉の「南房総」で「イタリア野菜」に特化して生産する農家がある......、そんな話を聞いた。その瞬間、この二つのキーワードが頭の中でグルグルと回り始めた。農家がイタリア野菜にこだわり続けるのは、いったいなぜだろう? 気候風土ははたして似ているのだろうか?

Jタウンネット編集部は南房総に電話で話を聞いてみた。

「南イタリアの旬と南房総の旬は近い...」

チーマディラーパ(画像提供:田倉ファーム)
チーマディラーパ(画像提供:田倉ファーム)

電話で答えてくれたのは、千葉県南房総市和田町の約3000坪の農地で、イタリア野菜を生産する田倉ファームの田倉剛(たくら・たけし)さんだ。

「イタリア野菜に特化した農業をやろうと考えたのは、ビジネスとして成り立つと考えたからです。約10年ほど前のことですが、イタリアンが大人気で、レストランもたくさんできてきました。しかし、イタリア野菜を生産する農家は少なく、提供できる野菜の種類も限られていました。需要はあるのに供給が追い付かない状況だったのです」
ファーべ(画像提供:田倉ファーム)
ファーべ(画像提供:田倉ファーム)

当時、宮城県の農業法人に勤めていた田倉さんは、イタリア野菜との出合いをきっかけに独立を志向する。「イタリア野菜を専門に作るなら、大都市に近い場所が良い。仙台もいいが、やはり東京がベストだ。東京周辺で探そう」と決めたそうだ。

スノーボードやサーフィンなどアウトドアスポーツが好きだった田倉さんは、千葉県の外房海岸にもたびたび訪れていた。南房総の海が気に入って、その周辺を探してみると、南房総市は、農業を軸とした移住促進、新規就農者の支援に力を入れていたという。

「サーフィンに通っていたときから感じていたのですが、気候が暖かい、海や山の自然も美しい、野菜・魚など食べ物が新鮮でおいしいことが、南房総の魅力です。さらに、都心から近いことが決定的でした」

2011年、田倉さんは南房総市に移住し、田倉ファームを立ち上げた。

花ズッキーニ(画像提供:吉祥寺Bal Bocca)
花ズッキーニ(画像提供:吉祥寺Bal Bocca)

地図をご覧になるとすぐ分かるが、イタリアも南北に長い国土だ。北と南では、気候もずいぶん違う。「南房総はどちらかというと南イタリアに近いのではないかと、私は思います。南房総は南イタリアの野菜を育てるのに適した土地ではないかと考え、南イタリアの野菜に特化した栽培を行っています」と田倉さんは語る。

田倉さんは、農作業の合間に、イタリア旅行に出かけた。シシリー島にも訪れている。現地で出会った農家から学んだことが、帰国後、南房総で実際に活かされているという。

「南イタリアの旬と南房総の旬は近いんですよ」と田倉さん。

焼いたズッキーニ(画像提供:吉祥寺Bal Bocca)
焼いたズッキーニ(画像提供:吉祥寺Bal Bocca)

田倉さんの農業経営では、イタリアンレストランへの直接販売が特色のひとつ。フェイスブックインスタグラムなどSNS、ホームページ、ブログを活用しながら、首都圏約50軒のレストランと連絡を取り合っている。農園で撮った旬の野菜の写真をネットで公開し、注文を取っているのだ。注文を受けた野菜は、宅配便で発送される。

イタリア野菜を育てる、田倉剛さん(画像提供:田倉ファーム)
イタリア野菜を育てる、田倉剛さん(画像提供:田倉ファーム)

インスタグラムの写真を見たシェフが、南房総まで直接訪ねてくることもある。農園で育つイタリア野菜に触れ、味わって、新たな料理のアイデアが生まれることがあるかもしれない。逆に、田倉さんが自信作を持ってイタリアンレストランを訪れることもあるという。料理の作り手との直接コミュニケーションが、新たな品種へのチャレンジにつながることもある。

「他では手に入らない野菜、自分にしか作れない野菜を作りたいですね」と田倉さんは抱負を語る。

田倉さんの農業経営の特色は、もう一つある。消費者が求める安心・安全な野菜を作る、つまり「完全無農薬無化学肥料栽培」なのだ。南房総近隣の若手生産者グループで、同じ目的を掲げた仲間と農業の魅力を発信しているところだ。

他では手に入らない南イタリア野菜を作り、イタリアンのシェフたちに直接販売する、これこそ真の「二刀流」? かもしれない。

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