朝夕流れる「平和のメロディ」って何だ? 京都・綾部市民から「暗い」との意見も...
特定の時間になると時報の意味も兼ねて音楽が流れる、というのは全国各地でよく見られる(聞かれる?)光景だろう。記者の地元でも、街中にスピーカーなどが設置されているわけではないのだが、どこからともなく謎の音楽が聞こえていた。
そんな街中で流される音楽に対し、京都府綾部市で市民から「音量が大きすぎる」「メロディが暗い」という意見が出され、検討会を設置することになったという。2018年3月7日付の京都新聞によると、朝夕に流されている「平和のメロディ」という音楽のようだ。
当時最新のシンセサウンドで平和を発信
平和というタイトルの音楽に対し、音量が大きい、暗いといった意見が出てしまったのは何とも言えないが、そもそもなんのために流しているのだろうか。
記者はYouTube上で全国各地の防災無線や市内放送の音源を録音、公開しているチャンネルで「平和のメロディ」を試聴してみたが、80年代のニュース番組のオープニングや放送終了画面の音楽、当時の海外ドラマのイントロといった趣のある曲で、「平和」というよりは「80年代」という印象を強く受ける。
Jタウンネットは3月8日、綾部市に取材を行い、同市企画政策課の担当者から話を聞くことができた。
まず、この「平和のメロディ」が流されるのは、朝7時30分と夕方18時(冬期は17時30分)の1日2回。朝と夕方で異なるメロディの曲となっているという。市内各所にスピーカーがある、というわけではなく、同市にある藤山(ふじやま)の山頂にある、「平和の鐘」という施設のスピーカーから市街に向けて流されている。
「『平和の鐘』は市制30周年だった1980年に、記念事業の一環として市民団体によって設置されました。巨大な音叉のような形をした鐘とスピーカーがあり、『平和のメロディ』はこのスピーカーから流されています」
流れている状況は理解できたが、なぜ「平和の鐘」から朝夕に「平和のメロディ」を流すことになったのだろうか。
「綾部市は世界連邦運動に取り組み、日本で初めて世界連邦宣言も行った、平和への意識が高い都市です。38年前のことですので詳細は把握できていないのですが、前述の市制30周年の際にも、商工会議所や綾部市自治体連合会で構成される実行委員会によって『町から平和を発信しよう』との意見が出され、平和をテーマにした『平和のメロディ』を流すことになったようです」
流す音楽は、1980年当時最先端だったシンセサウンドに決まり、積極的にシンセサイザーを取り入れた楽曲を手掛けていた音楽家・三枝成彰(さえぐさしげあき)さんに作曲を依頼。提供された2曲を朝夕に流しているというわけだ。
綾部市の公式サイトによると、藤山は標高201mの小さな山だが、そこに設置されたスピーカーから聞こえる音楽の音量がうるさいというのは、相当な爆音にも思える。担当者によると、音量が大きいという意見は以前からあり、そうした声を受けて下げるといった対応は行っていたという。
しかし、2016年12月に綾部市自治体連合会から市へ要望書が提出され、状況が変わる。独自に市民へのアンケート調査を行いその結果を受けたもので、おおむね『平和のメロディ』は現状のままでよいというものだったが、中には音量が大きい、夕方のメロディが暗いといった声もあったのだ。
「昨年度には市議会でも要望書が出ていることが議論となり、その中で市長が検討会を開催すると回答し、3月5日と14日の2回に渡り公開検討会が行われることになりました」
放送の中止やメロディの変更など、さまざまな案が出ているとのことで、14日には今後の方向性を決め、対応を考えていくようだ。ひょっとするとレア音源となってしまうかもしれない綾部市の「平和のメロディ」。今のうちの録音しておいてもいいかもしれない。