実は読んだことない文豪の名作小説! 3位「山月記」 2位「たけくらべ」、1位は...?
2016年10月26日、毎日新聞から発表された「第70回読者世論調査」によると、読んだことのある本のトップは、「坊ちゃん」(夏目漱石)だった。なんと61%の人が「読んだことがある」と答えたという。
ところが、明治以降の日本の名作小説の中で、意外に読まれていない作品、少なからずありそうだ。文豪と呼ばれた作家の有名作品なのに、実はまだ読んでなかった、というケースも......。ついつい読みそびれてしまった作品、多いかもしれない。
そこで、実は読んだことない、あの「文豪」の名作小説は? という質問で、Jタウン研究所は都道府県別にアンケート調査を行った(総投票数520票、2016年11月21日~2017年1月10日)。
はたして、その結果は――。
流行語トップ10に選ばれ、映画化もされた、あの作品が...!?
実は読んだことない名作小説は?という、問いかけに対しての結果が、下のリストだ。なお、選択肢の中から1つを選んでもらう形を取った。
実は読んだことない名作、第1位は、18.8%、小林多喜二の「蟹工船」だった。5人に1人は「読んだことない」と告白している。この作品は、1929年に発表され、北洋で操業する蟹工船で働く貧しい労働者たちの群像が描かれている。戦前のプロレタリア文学の代表作だ。
2008年、再脚光を浴び、新語・流行語大賞で流行語トップ10に選ばれた。松田龍平さん、西島秀俊さん、高良健吾さんなどのキャスティングで映画化され、2009年に公開、DVDも発売されている。にもかかわらず、読んだことがない名作小説のトップに挙げられることになろうとは......。
第2位は、14.0%、五千円札でもおなじみ樋口一葉の「たけくらべ」である。明治時代中期、1895年から翌年にかけて、「文学界」に掲載された小説だ。東京・吉原を舞台に、少年少女の淡い恋を描いている。
一葉は、吉原に近い下谷龍泉寺町で荒物雑貨駄菓子屋を営んでいた経験があり、その見聞をもとに創作した作品と言われている。過去に、映画化、テレビドラマ化が何度も試みられている人気作だが、意外にも読んだことがない人が多かった。文語体なのが、ハードルを上げているのかもしれない。
第3位は、11.9%、中島敦の「山月記」である。1942年、発表された短編小説。唐代、詩人となる望みに破れて虎になってしまった男・李徴の数奇な物語だ。国語教科書などに掲載されていることも多いのだが、みんな読み飛ばしちゃったのだろうか......。
また第4位は、10.2%、梶井基次郎の「檸檬」だ。1925年に発表された短編小説で、京都に下宿している主人公が街を歩きながら、レモンと出合った感動と、それに触発された空想が描かれている。
さて5位に、8.8%と同率で並んだのは、明治と昭和の文豪、二人の作品だった。森鴎外の「舞姫」と、太宰治の「人間失格」だった。
「舞姫」は、1890年に発表された短編小説。ドイツに留学した主人公が、絶世の美少女と恋に落ち、やがて悲劇的な結末を迎える。自らの留学体験をもとに、回想録の形で綴った、鴎外初期の代表作である。
一方、「人間失格」は1948年発表された小説。太宰が玉川上水で入水自殺する直後に刊行されたため、遺書のような自伝的小説と考えられている。戦後を代表するベストセラーとなった。2009年には、太宰治生誕100年を記念して映画化され、主人公を生田斗真が演じ、伊勢谷友介、寺島しのぶ、石原さとみなど、豪華な顔ぶれが話題となった。
「舞姫」も「人間失格」も、堂々たる名作だ。とても読んだことない名作小説の5位になるとは信じられないが、事実は小説より奇なり......である。
なお、逆に選んだ人が最も少なかったのは芥川龍之介の「羅生門」。短編でもあり、高校教科書ではすっかり常連だけに、さすがに馴染みが深いようだ。