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名古屋人はもう「~なも」とは言わない? 代表的名古屋弁「絶滅」の真偽は...

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.10.28 17:00
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1995年にサンマーク出版から発売された方言解説本「試験に出る名古屋弁会話集中講座」に、次のような記述がある。

「ホレ、よく名古屋弁というと、すぐ『あのなも』『このなも』『だちゃかん』など、すでに化石化してまっとる言葉が代表的なものとして紹介されたりしとりますが......」

20年前の時点で"化石化している"と地元の人に断言された「なも」。
ところが、あるテレビ番組が「名古屋の最強方言自慢」の1つとして取り上げ、そのときの映像がツイッターで紹介されるや、反論のツイートが怒涛のごとく投稿された。

元ネタとなったツイートは2015年10月25日に発信された。放送中のテレビモニターを撮影し、その画像を貼り付けている。

問題シーンの再現イラスト(Jタウンネット編集部作成)
問題シーンの再現イラスト(Jタウンネット編集部作成)

地元民「そんな言葉、語尾につけたことなーい」

編集部が調べたところ、ネタ元となったのは2013年10月12日放送の「めざましどようび」(フジテレビ系)のコーナー「TOP OF THE WORLD」のようだ。
本場の名古屋弁を広める活動を行っている人が、タレントの鈴木ちなみさんにお国言葉を教えたときの1シーンと見られる。

2年前の映像がなぜ今ごろフォーカスされたのかは不明だが、本ツイートに対して「うんうん、『~なも』って使うよね!」と同意する声は皆無だった。

これらの反応が現代名古屋人の一般的な感覚なら、「なも」はほぼ絶滅した言葉とみていいだろう。

「なも」は日本三大美方言の1つだった

ネタ元となった画像は映像の一部分だけを切り取っている。番組が伝えたかったことは別にあるのでは――しかしコーナー全体の映像を確認することはできなかった。

そこでJタウンネットは、1971年に刊行された芥子川律治著「名古屋方言の研究」にあたった。同書は「なも」について次のように解説している。

「『なも』は前掲の『なもし』の『し』を脱落して生まれたものと考える。『なもし』の固さと重さをきらって、もっとやわらかなことばを生み出そうとした市民の言語意識が、この『なも』を生み出したものと思われる。そうしてその成立は、おそらく下町ではなく、上町の町人階層であったであろう」

「な」は感動助詞で「もし」は申しが変形した言葉だ。
余談になるが、電話で通話するときによく使う「もしもし」は、明治時代の電話交換手が「『おいおい』『こらこら』では相手に失礼」と使い始めたとされる。相手に話しかける第一声としてはよくできた表現だ。

「なも」に話を戻す。名古屋市だけにとどまらず、愛知県尾張地方や岐阜県美濃地方で使われていた時期もあった。

「名古屋方言の研究」に掲載されている、「ナモシ系助詞の分布図」
「名古屋方言の研究」に掲載されている、「ナモシ系助詞の分布図」

名古屋上町言葉は、京都の「京言葉」と大阪の「船場言葉」に並ぶ日本三大美方言の1つといわれる。生粋の名古屋人のブログを読むと、「年配の女性が話す上町言葉は、柔らかくて上品な響きだった」と書かれている。

ここからは仮説だが、先のシーンは、東海地方出身の鈴木ちなみさんを通して「こんな雅な表現が名古屋にはあったんだよ」と視聴者に知ってもらうため、収録されたのかもしれない。

番組が放送された2013年当時のツイートを追跡すると、番組の視聴者による共感の声は確かにあった。

「なも」が日常用語として復活する可能性は限りなく低そうだが、この言葉が成立した過程に思いをはせるのも悪くない。

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